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2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会

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結果は高い精度を保ちつつ,ノイズの影響を抑えられること<br />

が分かった(JIST,51(2),141).<br />

またBalaらは紙素材に含まれる蛍光色素の分光特性を生か<br />

した Watermarking 手法を提案した.つまり一般光源下では隠<br />

蔽された情報が UV 光源下でのみ発現するものである.従来<br />

から同等の手法は提案されているが,本研究では蛍光色素と<br />

インクの分光特性を考慮することによって,特殊なインク等<br />

を必要とせずに実現できることが新しい(CIC,12).<br />

羽石らは天然鉱物色素で描かれた壁画の解析を目的に,色<br />

素の分光特性から領域分割する手法を提案している.近年,<br />

領域分 割手法としてサブ空 間法が 注 目されているが,<br />

CLAFIC などの従来手法は非線形性を有するシステムには対<br />

応できなかった.そこで非線形カーネルと融合した KNS 手法<br />

が提案されており,本研究ではこの KNS を分光画像の領域分<br />

割に適用した.評価実験の結果,分光画像の領域分割におい<br />

て KNS 手法が CLAFIC より優れた性能を示した(CIC,95).<br />

Nishino らは色識別能を強調するための分光フィルタを提<br />

案した.実験対象として一方のサンプルは肌と血管を含む色<br />

とし,他方のサンプルは化粧の塗布を制御した顔の肌色を用<br />

いた.ΔE 00 色差を最大化するようにフィルタ特性を最適化し<br />

たところ ON/OFF が急激に切り替わるフィルタ特性が得ら<br />

れ,このフィルタを用いることで色識別能を強調するフィル<br />

タが得られた(CIC,195).<br />

6. 画像保存<br />

6.1 画像保存関連技術<br />

金沢幸彦<br />

(富士フイルム・アドバンスト マーキング研究所)<br />

昨年は,各種デジタル写真プリント材料の保存性試験方法<br />

を実質的にどうすべきか,国内外で討議された年であった.<br />

従来,各社で独自に行っていた保存性評価方法を,統一的な<br />

ものに是正する動きも見られ,国内では <strong>2007</strong> 年 11 月に社団<br />

法人 JEITA(電子情報技術産業協会)が,国内では初めての<br />

画像保存性試験方法の規格となる「デジタルカラー写真プリ<br />

ント画像保存性評価方法(JEITA CP-3901)」を制定した.な<br />

お,ISO で規格化されるには,未だ暫く議論が続きそうであ<br />

る.<br />

保存性評価技術に関する,主だった報告内容について,以<br />

下に紹介する.<br />

耐光性評価方法に関しては,Kali Campbell(HP)らが,<br />

ショーウインドー(Commercial in-window display environment)<br />

におけるインクジェットプリントの耐光性を,冷凍機ありな<br />

しの Xenon 耐光試験機で評価した結果について報告してい<br />

る.ショーウインドーにおける平均暴露量を 6000 lux×12 hr/<br />

日と想定した場合の,HP 及び競合品の寿命(WIR 基準)は,<br />

約 0.5 ~ 3 年としている.また,窓越し光の分光分布を得る<br />

ために,Xenon のフィルターとしては,cut-off が 300 nm の<br />

Window-B/SL(ボ ロシリケート)を使用している(NIP23 proceedings,734).<br />

<strong>2007</strong> <strong>年の写真の進歩</strong> 145<br />

Steven D. Rice(Western Michigan Univ.)らは,各種デジタ<br />

ルプリント材料の耐光性を,色差(ΔE)及びガマット空間に<br />

おいて比較した.ただ,使用した卓上の Xenon 試験機では,<br />

サンプル温度を室温並みにコントロールすることができな<br />

かったため(最低でも BST 35°C にしか設定できなかった),<br />

ワックスベースのインクは,ランプによる熱の影響を受けた<br />

模様である(NIP23 proceedings,739).やはり,耐光性評価<br />

には温湿度制御が欠かせない.<br />

ガス耐性では,Stephan Moeller(Felix Schoeller jr. GmbH &<br />

Co. KG)らが,インクジェット,昇華型プリント,銀塩カ<br />

ラー写真の O3,NO2,SO2 耐性について,耐光性も含め,6ヶ<br />

月相当暴露したところで比較評価している.それによると,<br />

染料系インクジェットプリントは,O 3 ガス耐性が主な劣化要<br />

因.NO 2 と SO 2 による影響は,O 3 より少ない.インクジェッ<br />

トではインクとメディアの組合せが重要など,いずれも従来<br />

知見に同じである.また,銀塩プリント材料は,全てにおい<br />

て耐久性に優れ,評価した中では最も優れるとしている<br />

(NIP23 proceedings,755).<br />

耐湿性評価方法としては,階元(富士フイルム)らが,イ<br />

ンクジェットプリント材料に対して検討した結果を報告して<br />

いる.耐湿性評価にチェックボード・チャートを採用し,色<br />

差(ΔE)による比較が有効であること,また,耐湿性評価用<br />

の温湿度としては 30°C 85%RH が最適としている(NIP23<br />

proceedings,728).<br />

一方,各種デジタルプリント材料の寿命年数比較という意<br />

味では,Henry Wilhelm が,2004 ~ <strong>2007</strong> 年における,28 種<br />

類のデジタルプリント材料の,オゾン耐性を含む Display<br />

Permanence Rating を行っている.染料系インク(メディア写<br />

真用紙)の中には,耐光性において銀塩プリントを凌ぐもの<br />

があること,銀塩プリント材料はオゾン耐性に強いこと,及<br />

びインクジェットの暗保存性は軒並み 200 年を超えるなどと<br />

している(IS&T’s Digital Fulfillment,43).<br />

画像保存セミナーでは,佐野(セイコーエプソン)がイン<br />

クジェット記録におけるモノクロプリントの画質と保存性に<br />

ついて説明している.YMC 各単色の混色としてのグレーの耐<br />

光性が,ある顔料(例:Yellow)律速になる場合があるのに<br />

対し,グレーの部分にカーボンブラックを多用することに<br />

よって耐光性を良くしたことを紹介している(画像保存セミ<br />

ナー,14).また,金沢(富士フイルム)は,デジタル写真<br />

プリント材料の保存性試験方法(耐光性・ガス耐性・暗保存)<br />

の概説及び昨今の保存性試験規格の動向について紹介してい<br />

る(画像保存セミナー,20).<br />

以上,ショーウインドーでの耐光性評価,色差やガマット<br />

を活用した評価方法,耐湿性評価方法などが,文献として発<br />

表された内容であり,また,実質的にデジタル写真プリント<br />

材料の保存性試験方法の規格化に向け,前向きに展開し始め<br />

た年であった.<br />

6.2 展示・修復・保存関係<br />

山口孝子(東京都写真美術館)<br />

ここでは DVD の保存性,展示照明としての白色 LED ラン

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