13.07.2015 Views

心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウ ... - 日本循環器学会

心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウ ... - 日本循環器学会

心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウ ... - 日本循環器学会

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

循 環 器 病 の 診 断 と 治 療 に 関 するガイドライン(2010 年 度 合 同 研 究 班 報 告 )ていることを 示 唆 した.さらに 心 疾 患 を 伴 う 多 くの 症 候群 が 心 中 隔 欠 損 を 合 併 し,その 遺 伝 子 座 が 確 定 してきたが, 病 型 に 特 異 的 とはいえない(Gruber PJ らのreviewの 表 参 照 ) 17),18) .NKX2-5( 伝 導 障 害 を 伴 う 心 房 中 隔 欠損 症 ),TBX5(Holt-Oram 症 候 群 )に 次 いで, 家 族 性 二次 孔 心 房 中 隔 欠 損 症 にGATA4 変 異 が 証 明 された 意 義 は小 さくないが 19) ,これら 転 写 因 子 は 相 互 にそして 多 くの下 流 遺 伝 子 群 へ 作 用 するカスケードに 特 徴 があり, 発 生機 序 の 解 明 は 複 雑 さを 増 したともいえる. 心 房 および 心室 中 隔 は 複 数 の 組 織 からなり, 組 織 成 長 と 癒 合 閉 鎖 に 至る 複 雑 な 時 間 的 空 間 的 過 程 が 想 定 される.さらに, 胎 生期 血 行 動 態 の 胎 児 心 臓 への 作 用 も 病 態 を 修 飾 する. 日 常診 療 でcommon diseaseとして 遭 遇 する 心 中 隔 欠 損 を 遺伝 子 レベルで 理 解 することは,いまだ 容 易 ではない.遺 伝 学 的 検 査 の 臨 床 的 意 義 は, 臨 床 家 を 困 惑 させるテーマである. 外 科 治 療 の 進 歩 により, 単 独 疾 患 としての心 中 隔 欠 損 の 生 命 予 後 が 著 しく 改 善 して 一 般 人 と 遜 色 ない 今 日 , 多 因 子 遺 伝 を 反 映 した 経 験 的 再 発 率 を 示 して 患者 家 族 を 励 ましているのが 遺 伝 カウンセリングの 現 状 である.しかし, 濃 厚 な 家 族 例 では 新 たな 遺 伝 子 変 異 が 発見 される 可 能 性 があり 20) , 遺 伝 子 解 析 の 目 的 に 研 究 的 側面 があることを 率 直 に 説 明 し,プライバシーの 保 護 を 前提 に 協 力 を 願 うことがある.3 Holt-Oram 症 候 群 (MIM#142900)1 概 念1960 年 にHolt MとOram Sが, 上 肢 の 奇 形 に 心 房 中 隔欠 損 を 合 併 した4 世 代 家 系 を 報 告 した 21) . 出 生 10 万 人に1 人 とまれな 疾 患 で, 常 染 色 体 優 性 遺 伝 形 式 をとる.先 天 性 心 疾 患 と 上 肢 特 に 母 指 ・ 橈 骨 側 の 異 常 で 臨 床 診 断する.さらにいずれかの 症 状 に 家 族 内 発 生 ( 常 染 色 体 優性 )があれば 確 実 である.Basson やNewbury の 臨 床 診断 と 家 系 集 積 が 22),23) ,1997 年 の 原 因 遺 伝 子 TBX5の 同定 とその 後 の 遺 伝 子 変 異 ― 表 現 型 検 討 の 基 礎 になった 24) .数 種 類 ある 心 臓 ・ 手 症 候 群 heart-hand 症 候 群 が 整 理 され,本 症 候 群 (HOS)はType1, 最 も 多 いものに 位 置 づけられている 25) . 心 形 成 異 常 発 生 へのTBX5 関 与 の 証 明 が,改 めて 本 症 候 群 への 関 心 を 高 めたことも 確 かである.2 心 血 管 病 変 の 特 徴HOS の95%に 先 天 性 心 疾 患 を 合 併 し, 伝 導 障 害 ( 房室 ブロック)を 伴 う 二 次 孔 心 房 中 隔 欠 損 症 が 典 型 である.Sletton LJ の 文 献 集 積 189 例 (1974~95 年 )では 心 房 中隔 欠 損 症 が60.3%を 占 め, 心 室 中 隔 欠 損 症 では 多 発 性 筋性 部 欠 損 が 多 く, 心 内 膜 床 欠 損 症 ( 一 次 孔 心 房 中 隔 欠 損 ),左 心 低 形 成 の 報 告 もある 26) .Newbery-Ecobの 報 告 55 例( 家 族 性 44, 孤 立 性 11)では 心 房 中 隔 欠 損 症 (34%),心 室 中 隔 欠 損 症 (25%),ファロー 四 徴 症 と 続 き, 心 電図 異 常 ( 伝 導 障 害 )のみが39%であった. 心 疾 患 と 上肢 異 常 の 関 連 については, 重 症 度 に 相 関 を 認 めたのに 対して, 上 肢 異 常 が 中 心 で, 心 疾 患 の 頻 度 が 少 ない 家 系 が存 在 することが 示 された.3 臨 床 像上 肢 から 肩 甲 部 の 異 常 は 表 現 型 の 幅 は 広 く, 同 一 家 系内 でも 一 定 しない. 多 くは 両 側 性 であり, 片 側 性 の 場 合は 左 側 病 変 が 高 度 であると 指 摘 されてきた. 拇 指 の 異 常( 母 指 欠 損 ・ 低 形 成 ,3 指 節 母 指 )が95%, 橈 骨 欠 損 ・低 形 成 が38%,アザラシ 肢 10%で,その 他 に 合 指 , 欠 指 ,尺 骨 異 常 等 がある. 鎖 骨 , 肩 甲 骨 , 胸 骨 , 肋 骨 の 異 常 もあり, 上 肢 と 胸 部 のX 線 検 査 が 重 要 である. 下 肢 の 異 常はない.このような 四 肢 骨 格 異 常 には 発 生 学 的 な 根 拠 がある. 顔 貌 は, 前 額 や 下 顎 が 広 くやや 角 張 って, 眼 間 は狭 く 鼻 柱 が 短 いことが 指 摘 されているが, 他 の 心 臓 - 手症 候 群 と 区 別 できるような 特 異 なものではない 27) . 精 神遅 滞 は 認 められていない.HOS を 他 の 心 臓 - 手 症 候 群 と 臨 床 的 に 鑑 別 すべきである.Tabatznik 症 候 群 Type Ⅱ,heart-hand 症 候 群 type Ⅲ(Spanish type, 中 指 関 節 欠 損 による 短 指 症 ).Char 症 候群 や Ulnar-mammary 症 候 群 (TBX3に 変 異 )では 尺 骨 側に 異 常 がある.Vater 連 合 (MIM#192350)や 鰓 弓 症 候群 brachial arch syndrome(MIM #164210 Goldenhar 症候 群 )も 除 外 する.4 原 因 遺 伝 子1997 年 に, 英 国 と 米 国 のグループからほぼ 同 時 に 染色 体 12q24.1 上 のTBX5 変 異 が 報 告 された.その 後 , 遺伝 子 変 異 は37 種 以 上 発 見 され, 変 異 の 範 囲 ・ 種 類 と 臨床 像 の 相 関 について 議 論 が 続 いている 28) .Drosophila 等 のモデル 生 物 で, 発 生 を 制 御 する 遺 伝 子発 現 のカスケード 研 究 が 進 展 した. 発 生 に 関 与 する 遺 伝子 群 は 種 を 超 えてよく 保 存 されており, 成 長 因 子 あるいは 転 写 因 子 (DNA の 制 御 領 域 に 結 合 して 他 の 遺 伝 子 のon/offを 切 り 替 える)をコードしている.T-box ファミリーはこのような 発 生 段 階 の 遺 伝 子 群 で,20 以 上 の 遺伝 子 が 知 られ,180のアミノ 酸 からなる 共 通 部 分 T-boxを 特 徴 とし, 別 名 Brachyury 遺 伝 子 である 29),30) . 細 胞 接着 , 特 に 脊 索 を 形 成 する 中 胚 葉 で 発 現 し, 実 験 発 生 学 に知 見 蓄 積 がある.その 転 写 因 子 の1つであるTBX5のヘ26

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!