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心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウ ... - 日本循環器学会

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心 臓 血 管 疾 患 における 遺 伝 学 的 検 査 と 遺 伝 カウンセリングに 関 するガイドライン激 ,LQT3は 睡 眠 , 安 静 時 に 発 症 することが 判 明 した 159) .この 結 果 から, 日 常 生 活 でのtrigger 因 子 を 避 ける 生 活指 導 が 有 効 である. 平 成 18~20 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究班 によって, 我 が 国 のLQT1,2,3における 心 事 故 の 誘因 についての 調 査 が 行 われた.LQT1(n=117)は, 運動 による 誘 発 が85%で,LQT2(n=129)は, 安 静 , 睡眠 時 が40%, 情 動 ストレス, 音 刺 激 が26%で,LQT3(n=22)では 安 静 , 睡 眠 時 が50%と,Schwartzらの 解 析と 同 様 の 傾 向 が 認 められた. 年 齢 による 検 討 では,20歳 未 満 の 若 年 群 で80%が 交 感 神 経 関 連 の 誘 因 ( 運 動 ,感 情 ストレス, 音 刺 激 / 覚 醒 ),40 歳 以 上 の 高 齢 群 では,低 カリウム 血 症 , 房 室 ブロック, 薬 剤 といった 二 次 性 の誘 因 による 発 症 が70%に 認 められた 160) .また,LQT1,LQT2の 遺 伝 子 変 異 部 位 別 の 予 後 を 検 討 した 結 果 からは,KCNQ1 遺 伝 子 の 膜 貫 通 領 域 に 変 異 を 持 つ 場 合 ,C-末 端 領 域 に 変 異 を 持 つ 場 合 と 比 較 して, 累 積 初 回 心 事 故発 生 率 が 有 意 に 高 いことが 明 らかになっており, 遺 伝 子診 断 に 基 づいたリスク 診 断 が 可 能 であることが 示 唆 された 160)-163) .4 遺 伝 子 型 - 表 現 型 関 連 (3)LQTの 低 浸 透 性Priori 164) らの 検 討 によって,LQTにおける 遺 伝 子 変 異の 低 浸 透 性 が 明 らかになった.そのため, 潜 在 性 LQT- 無 症 候 性 遺 伝 子 変 異 キャリアが 多 く 存 在 する 可 能 性 が指 摘 されている.こうした 症 例 のなかには,trigger 因 子を 避 ける 生 活 指 導 や, 適 切 な 薬 物 療 法 を 受 けずに 突 然 死を 来 たす 症 例 がある 可 能 性 があり,こうした 症 例 を 発 掘し, 的 確 に 診 断 を 下 す 必 要 性 があると 考 えられる. 潜 在性 LQTの 診 断 には, 強 い 交 感 神 経 刺 激 をもたらす 薬 物負 荷 による 診 断 が 試 みられており, 成 果 を 挙 げている.また, 偶 発 的 に 無 症 候 性 キャリアにカリウムチャンネル阻 害 薬 が 投 与 されたり, 低 カリウム 血 症 を 呈 することで,顕 在 化 することがあり 得 る.こうしたことから,Prioriらの 研 究 によって,LQTのリスク 評 価 法 が 提 唱 されている 152) .5 遺 伝 子 診 断 の 治 療 への 応 用原 因 遺 伝 子 変 異 に 基 づく 治 療 面 への 応 用 としては,ナト リ ウ ム チ ャ ン ネ ル 遮 断 剤 で あ る メ キ シ レ チ ン がSCN5A 変 異 であるLQT3のQTc 間 隔 を 短 縮 する 効 果 があること 165),166) , 経 口 カリウム 製 剤 の 服 用 によって,HERG 遺 伝 子 (KCNH2) 変 異 であるLQT2でQTc 間 隔の 短 縮 効 果 が 認 められること 等 167) が 初 期 に 報 告 されている.しかし, 遺 伝 子 解 析 による 知 見 が 蓄 積 された 結 果 ,ナトリウムチャンネル 遮 断 剤 の 使 用 にあたっては, 後 述するオーバーラップ 例 のうちSCN5A 変 異 例 では,Ic 群抗 不 整 脈 の 使 用 に よ り,QTc 延 長 か らBrugada 型 のJ-wave の 出 現 が 認 められる 例 も 報 告 されており 168) , 特にIc 群 の 抗 不 整 脈 薬 の 使 用 には 慎 重 である 必 要 があると 考 え ら れ る. β 遮 断 剤 の 有 効 性 は,Schwartz 159) ,Shimizu 163) ,Priori 169) らの 解 析 により,LQT1,LQT2の心 事 故 の 抑 制 に 有 効 であるが,LQT3ではその 効 果 が 劣ることが 示 されている.KCNQ1 とKCNH2 の 遺 伝 子 異常 では,イオンチャンネルの 細 胞 内 のtrafficking 異 常 が重 要 な 病 態 生 理 メカニズムである 可 能 性 が 認 められている 170),171) .こうした 症 例 に 対 しては, 今 後 ,traffickingを 改 善 する 薬 物 が 治 療 に 用 いられる 可 能 性 がある.Shimizu 166) によってLQTタイプ 別 の 治 療 方 針 の 選 択 が 推奨 されている.3 二 次 性 QT 延 長 症 候 群重 篤 な 遺 伝 性 QT 延 長 症 候 群 の 遺 伝 子 解 析 の 結 果 から, 本 症 候 群 が 心 筋 細 胞 のイオンチャンネルの 遺 伝 的 異常 によりもたらされることが 判 明 したが,Prioriらの 研究 から,イオンチャンネル 遺 伝 子 変 異 の 低 浸 透 性 が 認 められている 164) . 従 来 から, 二 次 性 QT 延 長 症 候 群 として電 解 質 異 常 , 徐 脈 , 心 疾 患 , 中 枢 性 疾 患 および 抗 不 整 脈薬 , 向 精 神 薬 , 抗 菌 薬 等 によってQT 延 長 ,TdP 等 の 心室 性 不 整 脈 が 発 症 することが 知 られていた.これらの 二次 性 QT 延 長 症 候 群 のなかには, 遺 伝 子 異 常 を 潜 在 的 に有 しながらも 不 完 全 な 浸 透 性 のために, 通 常 の 状 態 では不 全 型 のQT 延 長 を 示 し, 特 定 の 薬 物 (http://www.QTdrugs.org/)や, 疾 患 , 身 体 条 件 によりQT 延 長 が 顕在 化 するものがあるという 報 告 が 認 められる 172)-178) . 多くはKCNH2 の 異 常 であるとされているが,KCNQ1,SCN5Aにも 起 こり 得 るとされている.ICH-S7B として策 定 中 の『ヒト 用 医 薬 品 の 心 室 再 分 極 遅 延 (QT 間 隔 延長 )の 潜 在 的 可 能 性 に 関 する 非 臨 床 的 評 価 ( 案 )』では,Ikr を 構 成 するHERG タンパクに 対 する 影 響 を 計 測 するin vitro Ikr の 測 定 が 要 求 されている.4Brugada 症 候 群1 ) 総 論Brugada 症 候 群 は,1992 年 にBrugada 179) らにより8 例の 右 脚 ブロック 型 の 心 電 図 と 右 側 胸 部 誘 導 でST 上 昇 を呈 し, 発 作 性 に 特 発 性 心 室 細 動 を 伴 う 疾 患 として 報 告 された. 後 にコンセンサスレポートが 発 表 され 180),181) ,Brugada 症 候 群 の 診 断 基 準 が 提 唱 されている. 遺 伝 学 的には,Chen らによってSCN5A(BrS1) 変 異 が 本 症 候 群の 原 因 であることが 報 告 され 182) ,これまでにBrS7 まで報 告 さ れ て い る.(BrS2:CACNA1C, BrS3:CACNB2,BrS4:GPD1L, BrS5:SCN1B, BrS6:KCNE3, BrS7:SCN3B)37

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