You also want an ePaper? Increase the reach of your titles
YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.
ステンレス 鋼 板 の 表 面 状 態 と 耐 食 性<br />
<br />
<br />
孔 食 電 位 測 定 によって 得 られる 電 位 は, 値 が 高 いほど<br />
耐 食 性 に 優 れる 材 料 であるとされている.ステンレス 鋼<br />
板 は 鉄 に11% 以 上 のクロム(Cr)を 含 有 した 合 金 であり,<br />
表 面 には 不 動 態 皮 膜 と 呼 ばれるクロム(Cr)と 酸 素 (O)か<br />
らなる, 厚 さ 約 2 ~ 3nmの 薄 膜 状 の 水 和 オキシ 水 酸 化 ク<br />
ロム 層 が 形 成 されている.ステンレス 鋼 板 の 表 面 は,この<br />
不 動 態 皮 膜 によって 腐 食 環 境 から 保 護 されている( 図 5).<br />
そこで, 未 使 用 鋼 板 と 実 働 後 車 両 の 不 動 態 皮 膜 の 状 態<br />
の 比 較 として,JIS・G・0577(2005)[ステンレス 鋼 の 孔 食<br />
電 位 測 定 方 法 ]に 基 づいて 各 試 験 片 の 孔 食 電 位 測 定 を 行<br />
い, 電 位 値 およびアノード 分 極 曲 線 挙 動 と 発 錆 の 相 関 に<br />
ついて 評 価 した.<br />
厚 さ・<br />
酸 素 (O) 腐 食 環 境 ・ 腐 食 性 物 ・ 質 厚 さ・<br />
酸 素 (O) 腐 食 環 境 ・ 腐 食 性 物 ・ 質 約 2~3nm・<br />
約 2~3nm・<br />
<br />
・ 1( 未 使 用 )・ 3(A)・ 5(B)・<br />
・ 1( 未 使 用 )・ 3(A)・ 5(B)・<br />
孔 食 電 位 測 定 ・<br />
孔 食 電 位 測 定 ・ 0.232[V]・ 0.417[V]・ 0.225[V]・<br />
( 平 値 ) 0.232[V]・ 0.417[V]・ 0.225[V]・<br />
( 平 値 )<br />
電 流 密 度 ・<br />
電 流 密 度 ・<br />
0.01~100・ 0.01~1.0 0.01~1.0・<br />
0.01~100・<br />
の 推 移 * ・ [µAcm -2 0.01~1.0<br />
]・ [µAcm -2 0.01~1.0・<br />
]・ [µAcm -2 ]・<br />
の 推 移 * ・ [µAcm -2 ]・ [µAcm -2 ]・ [µAcm -2 ]・<br />
*:アノード 分 極 曲 線 において, 孔 食 電 位 値 に 到 達 する<br />
*:アノード 分 極 曲 線 において, 孔 食 電 位 値 に 到 達 する<br />
までの 電 流 密 度 の 推 ・移 範 囲<br />
までの 電 流 密 度 の 推 ・移 範 囲<br />
不 動 態 皮 膜 CrOx (OH) 2-x・nH2O・<br />
不 動 態 皮 膜 CrOx (OH) 2-x・nH2O・<br />
クロム(Cr)<br />
クロム(Cr)<br />
ステンレス Fe+Cr・<br />
ステンレス Fe+Cr・<br />
<br />
<br />
表 6に 孔 食 電 位 の 測 定 結 果 を 示 す.なお, 試 験 は 腐 食<br />
促 進 試 験 で 腐 食 度 合 いの 差 が 顕 著 であった,[#80BG 仕<br />
上 げ]の 試 験 片 3 種 類 ( 試 験 片 1, 試 験 片 3, 試 験 片 5)<br />
を 代 表 して 行 った.<br />
試 験 片 1と 試 験 片 5の 電 位 値 はほぼ 同 値 であったが,<br />
試 験 片 3の 電 位 値 は 試 験 片 1や 試 験 片 5よりも <strong>特</strong> 出 して<br />
高 い 値 である. 次 に, 図 6 ~ 8に 孔 食 電 位 測 定 時 に 得 ら<br />
れたアノード 分 極 曲 線 の 挙 動 を 示 す. 各 試 験 片 の 曲 線 挙<br />
動 を 比 較 すると, 試 験 片 1の 挙 動 は, 図 6に 黄 囲 みで 示<br />
したように, 孔 食 電 位 よりも 低 い 電 位 においても, 電 流<br />
密 度 10µAcm -2 を 超 える 電 位 域 が 認 められる.この 挙 動<br />
は, 孔 食 電 位 よりも 低 い 電 位 ではあるが, 試 験 片 表 面 で<br />
は 不 動 態 皮 膜 の 破 壊 が 起 こり 始 めていることを 示 してい<br />
る.これに 対 して, 試 験 片 3および 試 験 体 5は 孔 食 電 位<br />
に 達 するまで, 電 流 密 度 10µAcm -2 を 超 える 様 相 は 見 ら<br />
れなかった.<br />
このことから, 試 験 片 3と 試 験 片 5は 試 験 片 1に 比 べ<br />
て 安 定 した 不 動 態 皮 膜 が 形 成 された 状 態 であり, 孔 食 ,<br />
つまり 腐 食 が 起 こりにくい 表 面 状 態 であったということ<br />
を 示 している.したがって, 実 働 後 車 両 より 採 取 した 試<br />
験 片 3および 試 験 片 5は 耐 孔 食 性 を 高 め, 不 動 態 を 安 定<br />
にするための 処 理 が 施 されていた 可 能 性 が 考 えられる.<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
55<br />
2016 年 12 月