JAEA-Review-2009-040.pdf:4.65MB - 日本原子力研究開発機構
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<strong>JAEA</strong>-<strong>Review</strong> <strong>2009</strong>-040<br />
2.8.1 ICRP 標準人を考慮した全身カウンタの校正手法の開発<br />
(1) はじめに<br />
全身カウンタの校正には,人体形状を簡易的に模擬した物理ファントムと呼ばれる均一体積線<br />
源が使用される。このため,測定対象となる人体と物理ファントム間の形状の相違に起因する測<br />
定結果の不確かさが問題となる。そこで, ICRP 標準人を精密に表現したボクセルファントムと<br />
モンテカルロシミュレーションを用いた全身カウンタの校正手法を開発し,全身カウンタの計数<br />
効率に対するファントムの影響を調べた。<br />
(2) 方法<br />
全身カウンタ:対象とした全身カウンタを写真 2.8.1-1 に示す。この全身カウンタは,厚さ約<br />
20 cm のしゃへい体の内部に,相対効率約 80 %の 3 台の p 型同軸 Ge 半導体検出器とベッドが配<br />
置されている。通常の校正には,BOMAB ファントム(BOttle Manikin ABsorption phantom)<br />
(写真 2.8.1-2)と呼ばれる成人男性を模擬した物理ファントムを使用している。これらの全身<br />
カウンタの構成物を可能な限り詳細にモデル化し,モンテカルロシミュレーションコードに組み<br />
込んだ。<br />
ICRP 標準人:ICRP 標準人とは,国際放射線防護委員会(ICRP)が,放射線防護のために開<br />
発したヒトモデルで,臓器質量などの人体を表すパラメータが詳細に定義されている。今回,ICRP<br />
標準人対応ファントムとして,ICRP 標準人と同等の身長,体重及び臓器質量を有するように開発<br />
されたボクセルファントム(R. Kramer et al.)を用いた(図 2.8.1-1)。なお,ボクセルファン<br />
トムとは,CT や MRI の医療画像データをもとに構築した,微小な立方体(ボクセル)の集合に<br />
より人体を精密に表現した 3 次元数学ファントムである。<br />
計数効率の評価:全身カウンタのベッド上に仰臥姿勢とした ICRP 標準人対応ファントムを線<br />
源とし,全身カウンタの計数効率を EGS4-UCWBC コードにより計算評価した。また,シミュレ<br />
ーション計算の妥当性を検証するため,BOMAB ファントムに対する計算を実施し,実測の結果<br />
と比較した。<br />
(3) 結果<br />
BOMAB ファントムに対する計算と実測の結果を図 2.8.1-2 に示す。両者は,全エネルギー範<br />
囲において,5 %以内で一致し,本シミュレーション計算手法による結果の妥当性を確認できた。<br />
また,計算により,実測では得られない光子エネルギーの計数効率も評価可能となった。<br />
図 2.8.1-3 に ICRP 標準人対応ファントムと BOMAB ファントムに対する計数効率を示す。こ<br />
の図から,ファントムの相違は計数効率に大きく影響しないことが判った。しかし,光子エネル<br />
ギー100 keV 以下の計数効率では,ICRP 標準人の方が約 10 %小さいことがわかった。これは,<br />
両ファントムの体格差(線源体積の相違)と骨による低エネルギー光子のしゃへい効果が原因と<br />
考えられる。<br />
(4) まとめ<br />
ICRP 標準人対応ボクセルファントムを用いた,全身カウンタの数学的校正手法を開発した。この<br />
手法を実用化することにより,さらに信頼性の高い体内放射能測定が期待できる。また,本手法を応<br />
用することにより,人体における放射能分布を考慮した全身カウンタの校正も可能となる。<br />
(高橋 聖)<br />
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