平 成 1 9 年 度 熱可塑性樹脂複合材料の機械工業 ... - 素形材センター
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6.3.2 船舶<br />
(1)はじめに<br />
複合材料とくに FRP は、自由な形状加工性、優れた比強<strong>度</strong>・比剛性および耐食性を有す<br />
るなど、多くの材料特性が船体構造に適している。しかしながら、実際の船舶構造への複<br />
合材料の利用は小型船と大型船とで極端にその様子が異なっており、一概に幅広く適用さ<br />
れているとは言えない。<br />
船舶が航空機や自動車あるいは他の一般工業用品と大きく異なるのは、圧倒的な量産化<br />
率の低さであり、一部の小型舟艇やプレジャーボートを除いて、一品毎のカスタム設計・<br />
ワンオフ<strong>成</strong>形がその多くを占める点であろう。<br />
モーターボート、ヨット、沿岸小型漁船等に代表される小型船は、FRP の中小規模・小<br />
量生産の製造技術による船体製造コストの低減に効果があり、その結果、GFRP 材料の出<br />
現と共にほぼ総ての小型船の主要構造材料となった。一方、一般に大型船の製造コストは、<br />
全体の 40~60%にも及ぶ多くの割合を材料費が占めており、材料コストの問題だけでも複<br />
合材料の利用を否定するのに十分であった 1)-4) 。また、軽量効果を見ても、航空機のよう<br />
に構造重量の軽量化がさらに全ヴィークル重量の軽量化を促す Growth Factor は期待出来<br />
ず、さらには車両のように運動性能が飛躍的に向上にする訳でもない。そのため、大型船<br />
の構造材料には鉄鋼材など金属材料のみが使用されているのが現状である。とくに日本国<br />
内においては、1982 <strong>年</strong>(昭和 57 <strong>年</strong>)に全改定された国交省の強化プラスチック船(FRP 船)<br />
特殊基準により、FRP 構造の艇は全長 35mまでしか認められていない 5) 。しかもこの規定<br />
では、ガラス繊維とポリエステル樹脂をハンドレイアップ法という手作業で<strong>成</strong>形する材<br />
料・工法のみが認定されている。<br />
以上の如く、国内の造船業界は、航空・自動車産業との比較において、小型船を扱う一<br />
部を除き、複合材料利用の取り組み・研究に積極的ではなかったといえる。一方、国外で<br />
は、大型船においても、高速フェリーや防衛関連の特殊用途船舶に軽量性・非金属・高強<br />
<strong>度</strong>(衝撃波)、ステルス性などの要求から船体構造に複合材料を用いる例は多く報告されて<br />
いる 6)-11) 。<br />
(2)船体構造用複合材料の特徴<br />
船体構造は、航空機と大きく異なる使用環境・負荷条件のため、複合材料構造も航空機<br />
のそれとは異なる構造が多く見られる。船体構造の特徴を簡単に整理すると、<br />
荷重・使用条件として、<br />
・水圧・波浪による強い面外荷重<br />
・波浪中の船体挙動にともなう複雑な荷重(ねじり&曲げ)<br />
・滑走・スラミングによる連続的衝撃荷重<br />
・広い使用環境条件(-40℃~80℃、WET 条件)<br />
があげられ、これらは航空機構造と大きく異なる条件である。要するに、船体構造は、高<br />
いパネル剛性/強<strong>度</strong>と動荷重/疲労耐久性を持ち、3次元応力状態に耐荷することが要求さ<br />
れているといえる。そのため、<br />
船体構造には以下のような複合材料構造が多く用いられている。<br />
・厚肉積層構造<br />
・サンドイッチ構造<br />
・数多くの二次接合/継手構造(T ジョイント)<br />
また、船舶の特徴として、<br />
・建造コストの制約が大きい<br />
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