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WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...

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接 の」 対 象 とした 学 問 という 印 象 を 受 けるが,そう<br />

ではないことに 注 意 する 必 要 がある. 実 際 は, 人 間<br />

の 限 界 を 理 解 し, 人 間 の 変 化 や 人 間 の 活 動 の 変 化<br />

に 対 応 できるように 労 働 環 境 や 使 用 器 具 を 設 計 す<br />

る 学 問 なのである.<br />

疲 労 ,スト レ ス ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ<br />

16 17<br />

ン 不 足 , 作 業 の 中 断 , 知 識 や 技 術 の<br />

不 足 などといった 要 因 が 医 療 専 門 家 にどのような<br />

影 響 を 及 ぼすかを 知 っておくことは, 有 害 事 象 やエ<br />

ラーの 誘 因 となる 特 性 を 理 解 するのに 有 用 である.<br />

ヒューマンファクターズの 基 本 は, 人 間 の 情 報 処 理<br />

の 方 法 と 関 係 したものである. 人 間 は 外 界 から 情 報<br />

を 知 覚 し,それを 解 釈 および 理 解 してから 反 応 を 起<br />

こすが,この 一 連 のプロセスの 各 段 階 でエラーが 発<br />

生 する 可 能 性 がある(トピック5を 参 照 ). T5<br />

人 間 は 機 械 とは 異 なる. 機 械 は 適 切 に 保 守 管 理 し<br />

ていれば 大 抵 は 大 いに 予 測 可 能 で 信 頼 できるが,<br />

人 間 は 機 械 とは 異 なり,むしろ 予 測 不 能 で 信 頼 でき<br />

ず, 作 業 記 憶 の 限 界 のため 情 報 処 理 能 力 にも 制 限<br />

がある.その 一 方 で, 人 間 は 極 めて 創 造 性 に 富 み,<br />

自 己 認 識 が 可 能 で, 想 像 力 を 有 し,その 思 考 は 柔 軟<br />

である 6) .<br />

人 間 はまた, 対 象 から 注 意 力 を 逸 らすことがある<br />

が,これは 短 所 でもあり 長 所 でもある. 気 を 逸 らせ<br />

るということは, 通 常 とは 異 なる 事 態 が 起 きた 場 合<br />

にすぐ 気 づくのに 役 立 つため, 人 間 は 状 況 を 速 やか<br />

に 認 識 して 対 応 することで, 新 しい 状 況 や 新 たな 情<br />

報 に 適 応 するのが 非 常 に 得 意 である.しかしながら,<br />

このような 人 間 の 能 力 はエラーの 原 因 ともなり, 気<br />

が 散 ることで 状 況 の 最 も 重 要 な 側 面 に 注 意 が 向 か<br />

なくなる.ここで 一 例 として, 採 血 を 行 っている 医<br />

学 生 ないし 看 護 学 生 の 事 例 を 考 えてみる. 採 血 を<br />

終 えて 片 づけをしていると, 隣 のベッドの 患 者 が 何<br />

かの 手 助 けを 求 めてきたので,その 学 生 は 作 業 を<br />

中 断 してその 患 者 のもとに 行 ったところ,まだ 採 血<br />

管 にラベルを 貼 っていなかったことを 忘 れてしまっ<br />

た. 更 にもう1つ 例 を 挙 げる.ある 薬 剤 師 が 電 話 で 処<br />

方 指 示 を 受 けていたところ, 同 僚 が 質 問 してきたの<br />

で 電 話 での 会 話 が 途 中 で 途 切 れてしまったとする.<br />

このような 状 況 では, 薬 剤 師 は 同 僚 や 電 話 の 相 手 の<br />

言 葉 を 聞 き 誤 ったり, 注 意 散 漫 となって 薬 剤 名 や 処<br />

方 量 を 確 認 し 忘 れたりする 可 能 性 が 考 えられる.<br />

脳 が 状 況 を 誤 って 知 覚 することで<br />

「 錯 覚 」を 起 こし,これがエラー 発<br />

生 の 要 因 となることもある.<br />

18<br />

20<br />

19<br />

十 分 に 注 意 していても 状 況 を 誤 って 知 覚 するこ<br />

とがあるという 事 実 は, 人 間 が 間 違 った 決 断 や 行 動<br />

を 選 択 する 主 な 理 由 の1つとなって<br />

21 22<br />

おり,そのため, 個 人 の 経 験 や 知 性 ,<br />

意 欲 , 注 意 力 とは 関 係 なく,「 愚 か<br />

23<br />

な」 間 違 いは 誰 もが 起 こしうるのである. 医 療 の 場<br />

ではこのような 状 況 をエラーと 呼 んでいるが,エ<br />

ラーは 患 者 に 影 響 を 及 ぼす 恐 れがある.<br />

こうした 知 見 は,エラーをするこ<br />

24 25<br />

とは 何 も 悪 いことではなく,むしろ<br />

避 けられないものであることを 思 い 出 させてくれ<br />

る 点 で 重 要 である. 簡 単 に 言 えば,エラーとは 脳 が<br />

もつ 弱 点 なのである.Reason 6) は,エラーを「 意 図<br />

した 目 標 を 達 成 しようとして 計 画 した 行 為 を 実 行<br />

で き な い こ と ,な い し は , 実 際 に 行 っ た 行 為 と 行 う<br />

はずであった 行 為 との 間 にずれがあること」と 定 義<br />

している.<br />

ヒューマンファクターズと<br />

26<br />

患 者 安 全 の 関 係<br />

エラーは 人 間 であれば 必 ず 犯 してしまうもので<br />

あり,その 発 生 を 助 長 する 状 況 に 全 ての 医 療 従 事 者<br />

が 注 意 することが 重 要 である 7) .これは 特 に, 学 生<br />

や 経 験 の 浅 い 若 手 の 医 療 従 事 者 によく 当 てはまる.<br />

人 間 の 実 践 能 力 に 影 響 を 与 えエ<br />

27 28<br />

ラーの 素 因 となる 要 因 は 数 多 く 存<br />

在 するが, 最 も 深 刻 な 影 響 を 及 ぼす 要 因 は 疲 労 とス<br />

トレスの2つである. 疲 労 が 実 践 能 力 を 低 下 させるこ<br />

とは 科 学 的 に 明 白 に 証 明 されており, 疲 労 は 患 者 安<br />

全 における 危 険 因 子 の1つとされている 8) .ま た 長 時<br />

間 の 労 働 でも, 血 中 アルコール 濃 度 が0.05mmol/L<br />

( 多 くの 国 で 自 動 車 運 転 が 違 法 行 為 となる 値 )の 状<br />

態 と 同 程 度 まで 実 行 能 力 が 低 下 することが 示 され<br />

ている 9) .<br />

ストレスと 実 行 能 力 の 関 係 も 研<br />

29 30<br />

究 によって 確 認 されている. 強 いス<br />

トレスを 受 けることは 誰 にもあるが,ストレスがあま<br />

りにないことも 非 生 産 的 であることを 知 っておくべ<br />

きである. 退 屈 してしまい, 適 度 な 警 戒 心 を 持 って<br />

業 務 に 臨 むことができなくなるからである.<br />

航 空 業 界 では,パイロットに 対 して 個 人 用 のチェッ<br />

クリストを 多 数 使 用 して 自 身 の 実 行 能 力 を 自 身 で<br />

監 視 するように 求 めているが,このアプローチは 医<br />

療 従 事 者 にも 容 易 に 採 用 できる 可 能 性 がある. 職 場<br />

において 最 適 な 行 動 を 確 実 に 取 れるようにするた<br />

めには, 医 療 従 事 者 全 員 が 個 人 レベルでエラー 減<br />

少 のための 一 連 の 戦 略 を 採 用 することを 検 討 する<br />

のがよいであろう.<br />

航 空 産 業 が 開 発 したIM SAFE(illness 31<br />

113 Part B トピック 2: 患 者 安 全 におけるヒューマンファクターズの 重 要 性

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