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WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...

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表 B.1.2 オーストラリアと 米 国 で 報 告 された 有 害 事 象 の 例<br />

19)<br />

有 害 事 象 の 種 類<br />

米 国<br />

オーストラリア<br />

( 全 1,579 件 に 占 める 割 合 [%]) ( 全 175 件 に 占 める 割 合 [%])<br />

入 院 中 または 退 院 後 72 時 間 以 内 の 自 殺 29 13<br />

手 術 での 患 者 または 部 位 間 違 い 29 47<br />

誤 薬 による 死 亡 3 7<br />

入 院 下 でのレイプ/ 暴 行 / 殺 人 8 N/A<br />

不 適 合 輸 血 6 1<br />

妊 産 婦 死 亡 ( 陣 痛 時 , 分 娩 時 ) 3 12<br />

乳 児 の 誘 拐 または 別 の 家 族 への 引 き 渡 し 1 −<br />

手 術 器 具 の 体 内 置 き 忘 れ 1 21<br />

正 期 産 児 の 予 期 せぬ 死 亡 − N/A<br />

新 生 児 高 ビリルビン 血 症 ( 重 度 ) − N/A<br />

長 時 間 のX 線 透 視 − N/A<br />

空 気 塞 栓 症 N/A −<br />

Source:Runciman B, Merry A, Walton M. <strong>Safety</strong> and ethics in health care:a guide to getting it right. 2007 20)<br />

サウスオーストラリア 州 の 場 合 , 医 療 上 の 過 失 に 対<br />

する 大 規 模 な 損 害 賠 償 訴 訟 による 賠 償 請 求 と 保 険<br />

料 は1997〜1998 年 の 間 で 約 1800 万 オーストラリ<br />

アドルに 上 ったという 26) .また 英 国 のNHS<br />

(National Health Service)は, 医 療 上 の 過 失 に<br />

対 する 損 害 請 求 を 解 決 するために 毎 年 約 4 億 ポンド<br />

を 支 払 っている 14) .1999 年 12 月 に, 米 国 医 療 研 究<br />

品 質 庁 (AHRQ)は 医 療 上 のエラーを 防 止 すれば<br />

年 に 約 88 億 米 ドル 節 約 できる 可 能 性 があると 報 告<br />

した.また1999 年 に 米 国 医 学 院 (IOM)が 出 版 した<br />

「To err is human」での 推 定 によると, 病 院 内 だ<br />

けで 毎 年 44,000 人 から98,000 人 が 医 療 上 のエ<br />

ラーで 死 亡 しており, 結 果 として 米 国 では 医 療 上 の<br />

エラーが8 番 目 に 多 い 死 因 となっているという.<br />

IOMはまた, 防 止 できたはずのエラーによって 米 国<br />

では 直 接 的 および 間 接 的 に 毎 年 約 170 億 米 ドルの<br />

経 済 的 損 失 が 発 生 しているとも 推 定 している.<br />

痛 みや 苦 しみによる 人 的 な 損 失 としては, 患 者 や<br />

家 族 , 介 護 者 の 自 立 と 生 産 性 の 低 下 などが 含 まれる<br />

が,これまでこれらが 数 値 として 算 出 されることは<br />

なかった. 医 療 従 事 者 の 間 では, 傷 害 の 発 生 率 や 傷<br />

害 による 医 療 システムへの 影 響 を 導 き 出 す 方 法 に<br />

ついて 議 論<br />

27­31)<br />

が 続 けられてきた 一 方 で, 多 くの<br />

国 が 医 療 システムの 安 全 性 を 優 先 的 に 再 検 討 し, 改<br />

革 する 必 要 性 を 認 めている.<br />

他 産 業 におけるエラーおよび 6<br />

システムとしての 失 敗 から 得 られた 教 訓<br />

1980 年 代 に 宇 宙 船 ,フェリー, 海 底 油 田 掘 削 場 ,<br />

鉄 道 網 , 原 子 力 発 電 所 , 化 学 物 質 備 蓄 基 地 などにお<br />

ける 大 規 模 な 技 術 的 災 害 が 発 生 したことにより, 職<br />

場 と 労 働 文 化 をより 安 全 なものにするための 組 織<br />

的 枠 組 みが 発 展 した.これらの 産 業 における 安 全 改<br />

善 に 向 けた 努 力 を 支 えた 中 心 原 理 は, 事 故 を 起 こ<br />

すのは 単 一 の 孤 立 した 要 因 ではなく, 複 数 の 要 因 で<br />

あるというものであった. 一 般 的 には, 状 況 ごとの<br />

要 因 や 職 場 の 状 況 , 潜 在 的 な 組 織 的 要 因 , 管 理 上 の<br />

決 定 が 関 与 している.これらの 災 害 の 分 析 はまた,<br />

組 織 が 複 雑 になればシステムエラーの 発 生 数 もそ<br />

れだけ 増 える 可 能 性 があることも 示 している.<br />

1970 年 代 に 組 織 の 機 能 不 全 について 調 査 した<br />

社 会 学 者 のTurnerは, 事 故 の 根 本 原 因 を 理 解 する<br />

うえでは「 事 象 の 連 鎖 (chain of events)」の 解<br />

明 が 極 めて 重 要 であることを 世 界 で 初 めて 提 唱 し<br />

た 32,33) . 組 織 事 故 につながる 潜 在 的 なエラーと 目<br />

に 見 えるエラーの 研 究 やリスクの 認 知 理 論 に 関 す<br />

るReasonの 研 究 も,このTurnerの 研 究 に 基 づい<br />

ている 34,35) .Reasonは1980 年 代 に 発 生 した 大 規<br />

模 災 害 の 特 徴 を 数 多 く 分 析 し, 技 術 的 な 障 害 よりも<br />

人 間 の 潜 在 的 なエラーの 方 が 重 大 であると 記 載 し<br />

ている.また, 器 具 や 部 品 が 不 完 全 であるとしても<br />

人 間 は 悪 い 結 果 を 回 避 ないし 軽 減 するように 行 動<br />

できるとも 述 べている.<br />

チェルノブイリの 大 災 害<br />

36)<br />

においては,チェルノ<br />

ブイリ 原 発 の 組 織 的 なエラーと 操 作 手 順 の 違 反 が<br />

「 不 良 な 安 全 文 化 (poor safety culture)」 37) の<br />

証 拠 であったと 一 般 的 にも 考 えられているが,まさ<br />

にこれらの 組 織 的 特 性 があの 事 故 の 原 因 となった<br />

ことが 分 析 によって 明 らかにされている.チェルノ<br />

ブイリ 原 発 事 故 の 研 究 から 学 べる 教 訓 は, 現 行 の 組<br />

織 文 化 が 規 則 と 手 順 の 違 反 をどこまで 許 容 するか<br />

が 極 めて 重 要 であるということである. 同 じ 特 徴 は<br />

97 Part B トピック 1: 投 薬 の 安 全 性 を 改 善 する

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