WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...
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改 善 のシミュレーションを 行 ってもよいであろう.<br />
患 者 搬 送 などの 緊 急 時 用 に, 重 要 な 患 者 情 報 を 伝<br />
達 する 手 段 として 正 式 に 定 められたコミュニケー<br />
ション 形 式 (ISBARなど)もある.ロールプレイもま<br />
た 有 益 であり,M&Mカンファレンスのロールプレイ<br />
を 最 初 にパーソンアプローチ, 次 いでシステムズア<br />
プローチを 用 いて 行 わせるのもよいであろう.その<br />
他 には, 学 生 が 手 術 室 で 問 題 に 気 づき,それを 率 直<br />
に 報 告 する 必 要 が 生 じたという 状 況 を 設 定 して,<br />
ロールプレイを 行 わせることも 可 能 である.<br />
手 術 室 および 病 棟 での 活 動<br />
本 トピックでは, 学 生 が 手 術 を 見 学 する 際 に 総 合<br />
的 な 活 動 を 行 う 機 会 が 数 多 く 提 供 されている.これ<br />
らは 研 修 プログラムの 後 半 に 実 施 されるの 通 常 であ<br />
るが, 研 修 の 初 年 度 から 開 始 してはならない 理 由 も<br />
ない. 具 体 的 には 以 下 のような 活 動 が 可 能 であろう:<br />
◦ 実 際 の 手 技 を 見 学 して, 正 しい 患 者 に 正 しい 手<br />
技 を 正 しい 時 期 に 実 施 するためにチームが<br />
行 っている 活 動 を 記 録 する.<br />
◦ 手 術 や 手 技 を 実 施 するチームを 見 学 して,どの<br />
ようなメンバーがいて,それぞれがどのように<br />
機 能 し,メンバー 間 や 患 者 との 間 でどのように<br />
情 報 が 伝 達 されているかを 調 べる.<br />
◦ M&Mカンファレンスに 出 席 して, 個 人 を 非 難 し<br />
ないシステムズアプローチが 採 用 されているか<br />
どうか, 患 者 安 全 の 基 本 原 則 が 適 用 されている<br />
かどうかについて, 短 いレポートをまとめる.<br />
◦ 周 術 期 のプロセス 全 体 を 通 して 患 者 を 追 跡 し,<br />
患 者 安 全 に 重 点 を 置 いた 活 動 と 業 務 を 観 察 す<br />
る.<br />
◦ 患 者 の 確 認 プロセスに 用 いられているプロト<br />
コル/チェックリストを 調 べて 批 評 する. 更 に,<br />
プロトコル/チェックリストに 関 するチームの<br />
知 識 と 遵 守 の 程 度 についても 観 察 する.<br />
◦ 病 棟 と 手 術 室 との 間 で 患 者 情 報 がどのように<br />
伝 達 されているかを 観 察 する.<br />
以 上 の 活 動 が 終 了 したら, 学 生 をペアまたは 少 人<br />
数 のグループに 分 け, 何 を 見 学 してきたか, 学 習 し<br />
た 特 性 や 技 術 は 活 用 されていたか, 用 いられてい<br />
た 技 術 は 効 果 的 であったかなどについて, 教 員 や 医<br />
療 専 門 職 を 交 えて 討 論 させる.さまざまな 分 野 の 学<br />
生 とともに 議 論 させれば,それぞれの 職 種 の 役 割 に<br />
ついて 学 び, 他 の 専 門 職 に 対 する 敬 意 を 持 たせると<br />
いった 効 果 も 得 られる.<br />
事 例 研 究<br />
ルーチンの 手 術 が 招 いた 有 害 事 象<br />
この 事 例 では, 麻 酔 のリスクが 説 明 されている.<br />
健 康 な37 歳 の 女 性 に 対 して 全 身 麻 酔 下 での 副 鼻<br />
腔 手 術 ( 待 機 手 術 )が 予 定 されていた. 麻 酔 科 医 は<br />
16 年 目 , 耳 鼻 咽 喉 科 医 は30 年 目 のベテラン 医 師 で<br />
あり, 手 術 室 看 護 師 4 人 のうち3 人 も 十 分 な 経 験 を 有<br />
していた. 手 術 室 の 器 材 も 十 分 に 整 備 されていた.<br />
午 前 8 時 35 分 に 麻 酔 導 入 が 開 始 されたが,ラリン<br />
ジアルマスクを 挿 入 することができなかった.2 分<br />
後 には 酸 素 飽 和 度 が 低 下 し 始 め, 患 者 はチアノーゼ<br />
( 顔 色 が 青 白 くなること)となった.この 時 点 での 酸<br />
素 飽 和 度 は75%(90% 未 満 で 著 しい 低 下 とされ<br />
る)であり, 心 拍 数 も 上 昇 していた.<br />
8 時 39 分 には 酸 素 飽 和 度 が40%( 極 めて 低 い<br />
値 )まで 低 下 したため,フェイスマスクと 経 口 エア<br />
ウェイを 用 いて 純 酸 素 での 換 気 が 試 みられたが,そ<br />
れも 困 難 を 極 めた. 麻 酔 科 医 は 別 の 医 師 とともに 気<br />
管 挿 管 による 気 道 確 保 を 試 みたが,これも 成 功 しな<br />
かった.8 時 45 分 になっても 気 道 は 確 保 できず,「 挿<br />
管 も 換 気 もできない」 状 況 が 続 いていた.この 状 況<br />
は 麻 酔 科 における 緊 急 事 態 に 相 当 し, 対 応 するため<br />
のガイドラインも 存 在 する. 看 護 師 たちは 状 況 の 深<br />
刻 さを 認 識 したようで, 一 人 は 気 管 切 開 セットを 用<br />
意 し,もう 一 人 はICUのベッドを 確 保 しにいった.<br />
医 師 たちは 別 の 喉 頭 鏡 を 用 いて 挿 管 を 試 み 続 け<br />
たが, 全 て 失 敗 に 終 わり, 手 術 を 断 念 して 患 者 を 回<br />
復 室 に 移 送 した. 最 終 的 には 酸 素 飽 和 度 が40% 未<br />
満 となった 時 間 が20 分 間 続 いた.その 後 患 者 は<br />
ICUに 移 されたが, 意 識 を 回 復 することなく, 重 度<br />
の 脳 損 傷 のため13 日 後 に 死 亡 した.<br />
問 い<br />
− この 患 者 に 全 身 麻 酔 をかける 前 にチームが 利 用<br />
できた 可 能 性 のある 技 術 としては 何 があるか.<br />
− チェックリストはどのような 点 で 有 益 となるか.<br />
SourceBromiley M. Have you ever made a mistake Bulletin<br />
of the Royal College of Anaesthetists, 2008, 482442–2445.<br />
DVD available from the Clinical Human Factors Group web site<br />
www.chfg.orgaccessed 21 February 2011.<br />
学 生 の 警 告 を 無 視 して 健 側 の 腎 臓 を 摘 出 した 事 例<br />
この 事 例 では, 正 しい 患 者 の 正 しい 部 位 に 正 しい<br />
手 技 を 間 違 いなく 実 施 するためにプロトコルを 使<br />
用 することの 重 要 性 が 示 されているほか,「 指 示 系<br />
統 の 上 位 にいるスタッフに 率 直 に 意 見 を 述 べる」こ<br />
とについての 重 要 原 則 も 示 されている. 安 全 に 関 す<br />
る 問 題 については, 学 生 を 含 めたメンバー 全 員 が 重<br />
<strong>WHO</strong> 患 者 安 全 カリキュラムガイド 多 職 種 版<br />
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