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WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...

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学 習 アウトカム: 知 識 と 実 践 内 容<br />

習 得 すべき 知 識 3<br />

本 トピックについて 学 生 が 習 得 すべき 知 識 として<br />

は,まずエラーから 学 ぶ 方 法 が 挙 げられる.またエ<br />

ラー(error),スリップ(slip),ラプス(lapse), 間<br />

違 い(mistake), 違 反 (violation), 有 害 でなかっ<br />

たインシデント(near miss), 後 知 恵 バイアスとい<br />

う 用 語 の 理 解 が 不 可 欠 となる.<br />

習 得 すべき 行 動 内 容 4<br />

課 程 を 終 えるまでに 以 下 のことが 可 能 とならな<br />

ければならない:<br />

◦ エラーのリスクを 高 めるような 状 況 や 個 人 レ<br />

ベルの 要 因 を 特 定 できる.<br />

◦ 有 害 事 象 の 分 析 に 参 加 でき,エラーを 減 らすた<br />

めの 戦 略 を 実 践 できる.<br />

エラー 5<br />

簡 潔 に 言 えば,エラーとは「 正 しいことをしよう<br />

として, 間 違 ったことをしてしまった」 場 合 に 発 生 す<br />

るものであり 1) , 意 図 していた 行 為 からの 無 意 識 的<br />

な 逸 脱 と 言 い 換 えることもできる. 認 知 心 理 学 者 の<br />

James Reasonは, 人 間 が 生 きていくうえで 避 け<br />

ることのできないこの 現 象 に「エラー(error)」と<br />

いう 用 語 を 当 て,「 計 画 された 精 神 的 または 身 体 的<br />

な 一 連 の 行 為 が 意 図 した 結 果 を 達 成 できなかった<br />

もので,その 失 敗 が 何 らかの 偶 然 の 作 用 には 起 因 し<br />

ない 場 合 」と 定 義 している 2) .エ ラ ー は , 人 間 が 間 違 っ<br />

た 行 為 を 行 う 場 合 (コミッション[commission])<br />

にも 起 こりうるし, 正 しい 行 為 を 行 わない 場 合 (オ<br />

ミッション[omission])にも 起 こりうる.<br />

違 反 (violation)は,システムによって<br />

6<br />

引 き 起 こされるエラーとは 異 なるもので<br />

あり, 許 容 された 手 順 や 診 療 の 標 準 からの 意 図 的 な<br />

逸 脱 によって 引 き 起 こされたエラーを 指 す.<br />

エラーは 転 帰 に 直 結 するものではない.<br />

7<br />

むしろ,ヒューマンエラーがなくとも 不 良<br />

な 転 帰 をたどる 患 者 は 大 勢 存 在 することを 学 生 は<br />

観 察 することになる.また 治 療 法 によっては,たとえ<br />

最 高 の 腕 をもった 医 師 が 最 高 の 環 境 で 診 察 したと<br />

しても, 合 併 症 は 起 こりうる.その 一 方 で, 早 い 段 階<br />

で 認 識 して 発 生 しうる 障 害 に 対 する 予 防 措 置 を 講<br />

じさえずれば,どれだけ 多 くのエラーが 起 きても 不<br />

良 な 転 帰 には 至 らない 場 合 もある.またトピック3で<br />

述 べたように, 患 者 自 身 にも 回 復 力 があるため, 実<br />

際 にエラーが 発 生 しても, 患 者 の 身 体 機 能 や 免 疫<br />

系 の 働 きによって 間 違 った 治 療 の 作 用 が 顕 在 化 し<br />

ない 結 果 , 何 の 問 題 も 生 じない 場 合 もある.<br />

エラーが 起 きたという 事 実 は 不 良 な 転 帰 が 発 生<br />

して 初 めて 注 目 される 場 合 が 多 いが,ここで 注 意 す<br />

べきは,エラーの 定 義 には 転 帰 という 用 語 が 含 まれ<br />

ていないという 点 である. 実 際 のところ, 医 療 分 野<br />

で 発 生 するエラーの 大 半 は, 早 いうちに 発 覚 して 対<br />

応 策 が 講 じられるため, 患 者 への 害 につながること<br />

はない.しかしながら, 明 らかになった 転 帰 の 内 容<br />

がエラーに 関 する 人 の 認 識 に 影 響 を 及 ぼすのは 間<br />

違 いなく,その 原 因 の 多 くは「 後 知 恵 バイアス<br />

(hindsight bipas)」と 呼 ばれる 現 象 である.これ<br />

は,ある 状 況 の 結 果 を 知 っている 場 合 , 問 題 となっ<br />

たインシデントの 発 生 前 や 発 生 途 中 に 行 われた 診<br />

療 に 対 する 認 識 に( 通 常 は 否 定 的 な) 影 響 が 生 じる<br />

という 現 象 である 2) .<br />

エラーについては, 日 常 生 活 の 8 9<br />

中 で 自 分 が 最 近 犯 した「 愚 かな 間<br />

10<br />

違 い」を 思 い 出 し,エラーというも<br />

のは 人 間 が 生 きていくうえでどうしても 避 けられ<br />

ないものであることを 再 認 識 すればよいのである<br />

(トピック2「 患 者 安 全 におけるヒューマンファク<br />

ターズの 重 要 性 」を 参 照 ).<br />

T2<br />

医 療 従 事 者 にとって 困 難 となる 現 実 は, 職 場 以 外<br />

での「 愚 かな 間 違 い」の 一 因 となる 精 神 的 プロセス<br />

が 職 場 にも 存 在 するということである.その 一 方 で,<br />

職 場 で 発 生 した「 愚 かな 間 違 い」は,それ 以 外 の 場<br />

合 とは 全 く 異 なる 結 果 を 招 くことになる.<br />

医 療 上 のエラー(medical error)という 用 語<br />

は, 医 療 において 起 こりうるエラーは 医 療 分 野 に 特<br />

有 のものであるという 印 象 を 与 えやすいため,やや<br />

誤 解 を 招 きやすい 言 葉 と 言 えるが, 現 実 はそうでは<br />

ない. 医 療 の 場 で 発 生 するエラーのパターンは, 他<br />

の 状 況 で 発 生 するさまざまな 問 題 や 状 況 と 全 く 同<br />

じなのである. 医 療 が 他 の 分 野 と 異 なるのは,エラー<br />

の 発 生 が 悪 とされる 文 化 的 傾 向 が 今 もなお 蔓 延 し<br />

ているという 点 である. 医 療 関 連 のエラーに 特 有 の<br />

もう1つの 特 徴 は,それが 意 識 的 なものであれ 無 意<br />

識 的 なものであれ, 失 敗 が 起 きたときに 苦 しむのは<br />

患 者 であるということである.<br />

失 敗 には 大 きく 分 けて2 種 類 のものがあるが,エ<br />

ラーはこれらの 失 敗 のどちらかが 原 因 で 発 生 する.<br />

すなわち, 意 図 した 通 りの 結 果 が 得 られなかった 場<br />

合 と, 意 図 した 行 為 自 体 が 間 違 っていた 場 合 であ<br />

る 3) . 前 者 はいわゆる 遂 行 上 のエラー(error of<br />

execution)であるが,これは 更 に 細 分 でき, 問 題<br />

の 行 為 が 観 察 可 能 な 場 合 はスリップ(slip),そうで<br />

ない 場 合 はラプス(lapse)と 呼 ばれる.スリップの<br />

<strong>WHO</strong> 患 者 安 全 カリキュラムガイド 多 職 種 版<br />

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