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WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...

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にある. 医 療 従 事 者 である 我 々は 普 段 , 医 療 行 為 の<br />

失 敗 を 考 えない. 医 療 従 事 者 が 失 敗 を 考 えるのは,<br />

特 異 的 な 治 療 が 成 功 するか 否 かを 考 える 場 合 だけ<br />

である. 医 療 従 事 者 が 医 療 を 提 供 する 際 , 普 段 から<br />

注 意 することはないが, 専 門 家 間 で 誤 った 情 報 が 伝<br />

達 される 可 能 性 や, 徹 夜 勤 務 後 の 外 科 医 が 疲 労 困<br />

憊 している 可 能 性 , 医 師 の 手 書 きの 指 示 を 判 読 で<br />

きない 薬 剤 師 が 用 量 を 間 違 え,その 薬 剤 が 患 者 に<br />

投 与 される 可 能 性 など,どれも 有 害 事 象 の 一 因 とな<br />

りうる. 医 療 専 門 家 は 個 々の 患 者 に 対 して 既 知 の 副<br />

作 用 と 合 併 症 のリスクを 説 明 することには 慣 れて<br />

いるが,システム 全 体 から 提 供 される 治 療 に 同 じ 論<br />

拠 を 適 用 することはない. 潜 在 的 リスクには 治 療 自<br />

体 のリスクとシステムのリスクがあり,システム 思<br />

考 では, 医 療 専 門 家 がこの 両 方 を 考 慮 に 入 れること<br />

が 求 められる.<br />

HROは 回 復 力 の 高 さでも 知 られており, 失 敗 に<br />

は 先 手 を 打 ち, 予 防 措 置 を 講 じる. 医 療 提 供 システ<br />

ムにおいて 最 も 回 復 力 が 高 いのは 患 者 である. 間<br />

違 った 薬 剤 の 投 与 や 間 違 った 治 療 を 受 けても 多 くの<br />

患 者 が 快 方 に 向 かうように, 多 数 の 有 害 事 象 が 患 者<br />

自 身 の 回 復 力 のおかげで 回 避 されているのである.<br />

医 療 にはまだ 安 全 の 文 化 があるといえないが,<br />

HROは 安 全 の 文 化 を 確 立 して 維 持 することに 多 く<br />

の 力 を 注 ぎ, 職 員 を 奨 励 したり 報 奨 を 与 えたりして<br />

いる.あるHROでは, 間 違 いを 認 めた 職 員 に 報 奨<br />

が 与 えられているが,これは, 間 違 いを 認 めて 措 置<br />

を 講 じることで 同 様 のエラーを 防 止 できるように<br />

なれば, 組 織 全 体 として 時 間 と 費 用 を 節 約 できるか<br />

らである.スタッフが 自 分 の 間 違 いを 気 兼 ねなく 認<br />

め, 病 院 の 機 能 や 資 源 を 投 入 する 余 裕 があり, 結 果<br />

として, 類 似 の 間 違 いを 防 止 ないし 最 小 化 できるよ<br />

うな 医 療 システムを 想 像 してみたい. 有 害 事 象 の 発<br />

生 率 は 著 しく 減 少 し, 多 くの 人 命 が 救 われ, 患 者 の<br />

苦 痛 も 軽 減 され, 医 療 スタッフの 士 気 も 高 まること<br />

になるだろう.<br />

高 信 頼 性 組 織 の 特 徴 を 学 ぶ 18)<br />

HROには 次 のような 共 通 の 特 徴 がみられる:<br />

◦ 失 敗 に 対 する 事 前 の 対 策 : 自 らの 活 動 が 高 リス<br />

クで,エラーが 起 きやすいことによる 失 敗 の 可<br />

能 性 を 認 識 し, 計 画 を 立 てる.<br />

◦ 回 復 力 を 高 める 取 り 組 み: 想 定 外 の 脅 威 を 前<br />

もって 見 つけ 出 し, 実 際 に 害 をもたらす 前 に 封<br />

じ 込 める.<br />

◦ 任 務 に 対 する 敏 感 さ: 最 前 線 の 勤 務 者 が 直 面<br />

している 問 題 に 大 きな 関 心 を 向 ける.<br />

◦ 安 全 の 文 化 : 地 位 の 高 い 職 員 から 非 難 される<br />

恐 れがなく, 個 々の 職 員 が 潜 在 的 な 危 険 や 実<br />

際 の 失 敗 を 気 兼 ねなく 共 有 できる.<br />

HROから 得 た 教 訓 を 医 療 分 野 に 応 用 する 19<br />

医 療 機 関 は 他 分 野 のHROから 学 ぶことができ<br />

る.HROでの 成 功 例 を 検 証 して 成 功 要 因 を 研 究 す<br />

ることもできれば,HROの 失 敗 例 から, 大 惨 事 はど<br />

のようにして 発 生 するか, 典 型 的 にはどのような 要<br />

因 が 存 在 するかなどを 学 ぶことも 可 能 である.<br />

法 的 規 制 の 役 割<br />

一 般 市 民 を 対 象 にするという 医 療 の 性 質 上 ,ほと<br />

んどの 国 が 医 療 従 事 者 を 対 象 とした 規 制 を 設 けて<br />

いる. 職 業 上 の 規 制 は, 各 医 療 専 門 家 に 対 して 職 務<br />

遂 行 に 必 要 な 能 力 を 身 に 付 け, 業 務 の 標 準 を 確 立<br />

および 実 践 するように 要 求 することで, 一 般 市 民 を<br />

保 護 している.また, 資 格 登 録 とその 維 持 に 関 する<br />

基 準 も 規 制 によって 定 められている. 規 制 当 局 の 役<br />

割 は, 個 々の 医 療 従 事 者 に 対 する 苦 情 を 受 け 付 け<br />

て 調 査 を 行 い, 資 格 の 停 止 または 取 り 消 し, 条 件 付<br />

きでの 業 務 許 可 など, 必 要 に 応 じた 適 切 な 措 置 を 講<br />

じることである.<br />

要 約 20<br />

システムズアプローチは, 有 害 事 象 の 温 床 となっ<br />

ている 複 数 の 要 因 を 理 解 および 分 析 するうえで 有<br />

用 である.したがって, 従 来 のパーソンアプローチ<br />

を 廃 止 し,システムズアプローチによって 状 況 の 評<br />

価 を 行 えば, 再 発 リスクを 低 減 するための 戦 略 を 確<br />

立 できる 可 能 性 が 高 くなる.<br />

事 例 研 究<br />

職 種 を 超 えた 協 力 およびコミュニケーションの 重<br />

要 性<br />

英 国 の 機 密 調 査 (Confidential Enquiry)に<br />

よって 特 定 された 多 数 の 回 避 可 能 な 妊 産 婦 死 亡 事<br />

例 では, 職 種 間 または 施 設 間 での 協 力 およびコミュ<br />

ニケーションの 不 備 が 診 療 の 妨 げとなっていた. 具<br />

体 的 には,チームメンバー 間 での 協 力 が 不 十 分 ない<br />

し 全 くなかった, 電 話 での 協 議 が 不 適 切 または 不 十<br />

分 であった, 医 療 専 門 家 間 ( 一 般 開 業 医 と 産 科 チー<br />

ムの 間 など)で 関 連 情 報 を 共 有 できていなかった,<br />

担 当 者 の 対 人 技 能 が 不 十 分 であった,などの 要 因 が<br />

挙 げられた.この 調 査 ではまた, 助 産 師 のケアに 関<br />

する 別 の 問 題 も 特 定 された.それは 通 常 業 務 から<br />

の 逸 脱 を 認 識 できなかったことによるもので,その<br />

127 Part B トピック 3:システムとその 複 雑 さが 患 者 管 理 にもたらす 影 響 を 理 解 する

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