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WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...

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トピック11:<br />

投 薬 の 安 全 性 を 改 善 する<br />

悪 心 を 訴 えた 小 児 に 対 する 不 適 切 な 投 薬<br />

ある 休 日 ,8 歳 の 女 児 Janeが 体 調 を 崩 し, 嘔 吐<br />

がみられるようになったため, 母 親 のHeather<br />

がJaneを 地 元 の 診 療 所 へ 連 れて 行 った. 診 察 し<br />

た 医 師 は 喘 息 と 診 断 し,ネブライザーによる 治 療<br />

が 必 要 と 説 明 した. 悪 心 については, 耳 道 感 染 に<br />

続 発 したものとして 抗 生 物 質 を 処 方 するととも<br />

に, 悪 心 に 対 する 治 療 として,クロルプロマジン,<br />

メトクロプラミドおよびアトロピンを 注 射 した.<br />

その 後 Janeに 意 識 水 準 の 低 下 がみられたた<br />

め, 地 元 の 小 さな 病 院 に 入 院 となったが,そこで<br />

は 呼 吸 器 症 状 に 対 応 できなくなったため,より 大<br />

きな 病 院 に 転 院 となった.<br />

診 療 所 の 医 師 は,Janeに 対 して 行 ったカクテ<br />

ル 療 法 を1 年 目 の 研 修 医 のときに 学 んでおり, 正<br />

しい 治 療 法 であったと 信 じていた.しかしながら,<br />

有 害 反 応 の 可 能 性 と 投 与 後 のモニタリングの 困<br />

難 さを 考 慮 すれば, 小 児 の 悪 心 に 対 してこの 治 療<br />

は 不 適 切 であった.また 医 師 はこれらの 薬 剤 に 関<br />

する 情 報 をHeatherに 十 分 伝 えてもいなかった.<br />

メタドンの 過 量 投 与<br />

薬 物 依 存 症 の 治 療 を 受 けていたMatthewが<br />

薬 物 更 生 クリニックを 受 診 した( 訳 注 :ヘロイン<br />

患 者 に 合 成 麻 薬 のメタドンを 与 えてヘロインを<br />

減 量 する 診 療 所 ).その 日 は3 人 の 看 護 師 が 業 務<br />

に 当 たっていた.このうち2 人 がMatthewを 別<br />

の 患 者 と 勘 違 いし, 用 量 について 十 分 な 注 意 を<br />

払 うこともなくメタドンを 投 与 してしまった.<br />

本 来 の 用 量 が40mgであるところを,この 看 護<br />

師 たちは150mg 投 与 した. 看 護 師 たちは 後 に<br />

なって 過 量 投 与 の 事 実 に 気 づいたが,Matthew<br />

の 主 治 医 にこのことを 報 告 しなかった. 更 に,も<br />

う 一 人 の 看 護 師 に 対 して 自 宅 用 として20 mgの<br />

メタドンを 渡 すように 指 示 した(この 処 方 は 医 師<br />

の 許 可 を 得 ていなかった).Matthewは 翌 朝 の<br />

未 明 にメタドン 中 毒 で 死 亡 した.<br />

SourceCase studies. Health Care Complaints Commission<br />

Annual Report 1995–199638. Sydney, New South Wales,<br />

Australia<br />

SourceWalton M. Well beinghow to get the best<br />

treatment from your doctor. Sydney, New South Wales,<br />

Australia, Pluto Press, 200251.<br />

はじめに ― 投 薬 に 注 目 する 理 由 1 2<br />

薬 剤 は 疾 患 の 治 療 と 予 防 に 非 常 に 有 益 であるこ<br />

とが 証 明 されている.この 成 功 により 薬 剤 の 使 用 量<br />

は 劇 的 に 増 加 したが, 残 念 ながら 投 薬 に 伴 う 危 険 や<br />

エラー, 有 害 事 象 もまた 増 加 することとなった.<br />

さまざまな 理 由 により, 薬 剤 使 用 をめぐる 状 況 は<br />

ますます 複 雑 化 している. 利 用 できる 薬 剤 の 数 も 種<br />

類 も 爆 発 的 に 増 え, 投 与 経 路 や 作 用 時 間 ( 長 時 間 作<br />

用 型 や 短 時 間 作 用 型 など)も 多 様 化 している. 同 じ<br />

成 分 の 製 剤 が 複 数 の 商 品 名 で 販 売 されている 場 合<br />

もあり, 混 乱 を 招 く 原 因 となっている.<br />

慢 性 疾 患 の 患 者 についてみると, 以 前 より 治 療 法<br />

は 改 善 されたものの, 複 数 の 薬 剤 を 使 用 する 患 者<br />

や 複 数 の 併 存 疾 患 を 抱 えた 患 者 が 増 加 しており,そ<br />

の 結 果 として, 薬 物 相 互 作 用 , 副 作 用 , 投 与 間 違 い<br />

のリスクが 高 くなっている.<br />

投 薬 のプロセスには 複 数 の 医 療 専 門 職 が 関 与 す<br />

る 場 合 が 多 く,そこでのコミュニケーションの 失 敗<br />

は 投 薬 プロセスの 連 続 性 を 損 なうことにつながる.<br />

処 方 する 薬 剤 が 多 様 化 している 以 上 , 医 療 専 門 職<br />

239 Part B トピック 11: 投 薬 の 安 全 性 を 改 善 する

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