WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...
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が 原 因 である. 現 場 の 看 護 師 , 薬 剤 師 , 医 師 , 歯 科 医<br />
師 , 助 産 師 は, 本 来 インシデントを 報 告 する 立 場 に<br />
あるのに,インシデント 発 生 させたとして 批 判 され<br />
てしまうからである. 前 述 のように,こうした 状 況 は<br />
後 知 恵 バイアスによって 更 に 悪 化 することが 多 い.<br />
パーソンアプローチは 医 療 のさまざまな 局 面 で 逆<br />
効 果 となるのである.(トピック3「システムとその 複<br />
雑 さが 患 者 管 理 にもたらす 影 響 を 理 解 する」を 参<br />
照 )<br />
T3<br />
インシデントの 報 告 頻 度 と 分 析 方 法 (システムズ<br />
アプローチかパーソンアプローチか)は, 組 織 の<br />
リーダーシップと 文 化 に 大 きく 依 存 する. 近 年 では,<br />
他 産 業 で 得 られたシステムの 安 全 性 に 関 連 した 教<br />
訓 を 反 映 して, 組 織 文 化 の 重 要 性 に 大 きな 関 心 が<br />
払 われるようになってきている 10) . 医 療 施 設 の 組 織<br />
文 化 と,その 施 設 で 治 療 を 受 ける 患 者 の 安 全 との<br />
間 には, 相 関 関 係 があると 考 えられている.<br />
組 織 文 化 は 組 織 内 で 共 有 された 価 値 観 や 信 条 を<br />
反 映 するものであり,これらが 組 織 の 構 造 や 管 理 シ<br />
ステムと 相 互 作 用 することで, 組 織 内 での<br />
19<br />
行 動 基 準 が 形 成 される 11) . 強 固 な 報 告 文<br />
化 をもつ 組 織 は, 医 療 スタッフが 嘲 笑 や 非 20<br />
難 を 心 配 することなく, 実 際 に 発 生 した 問 題 や 発 生<br />
する 恐 れのある 問 題 を 気 兼 ねなく 報 告 できること<br />
から,エラーから 学 びやすい 環 境 である. 学 生 と 新<br />
人 の 医 療 従 事 者 も 職 場 文 化 の 一 部 となる. 自 分 た<br />
ちには 業 務 環 境 を 変 えたり 影 響 を 与 えたりするよう<br />
な 力 はないと 感 じているかもしれないが,システム<br />
を 改 善 する 方 法 を 模 索 することはできる. 簡 単 なと<br />
ころでは, 診 療 に 関 する 討 論 の 場 で, 患 者 を 含 めた<br />
医 療 チームの 他 のメンバーに 敬 意 をもって 接 した<br />
り,コーヒーを 淹 れるときにほかのメンバーにも<br />
コーヒーを 勧 めたりするのでもよい. 有 害 事 象 に 関<br />
与 した 個 人 を 名 指 しで 非 難 するのを 控 えることも,<br />
学 生 が 文 化 を 変 えるのに 貢 献 できる 方 法 の1つで<br />
ある. 間 違 えた 特 定 の 医 療 スタッフについて 他 のメ<br />
ンバーが 話 しているのを 耳 にした 場 合 には, 話 の 焦<br />
点 を 個 人 からその 間 違 いに 関 わった 可 能 性 のある<br />
要 因 に 移 すようにするとよいであろう.<br />
インシデントの 報 告 とモニタリングに 関<br />
21<br />
する 上 記 以 外 の 効 果 的 な 戦 略<br />
7)<br />
としては,<br />
匿 名 での 報 告 を 許 可 する, 適 切 なタイミングで<br />
フィードバックを 行 う,インシデント 報 告 や 有 害 でな<br />
かったインシデントの 報 告 によって 事 態 がうまく 収<br />
集 した 場 合 には 公 の 場 で 賞 賛 する,などが 挙 げられ<br />
る. 有 害 でなかったインシデントを 報 告 するのは,<br />
「 何 の 代 償 もなく」 学 べるという 点 で 有 用 である.す<br />
なわち, 患 者 に 一 切 の 害 が 及 ぶことなく, 調 査 を 通<br />
じてシステムの 改 善 に 取 り 組 めるということである.<br />
根 本 原 因 分 析 (RCA) 22<br />
トピック7「 品 質 改 善 の 手 法 を 用 いて 医 療 を 改 善<br />
する」も 参 照 のこと.<br />
T7<br />
RCAの 原 則 を 用 いたモデルがいくつか 開 発 され<br />
ているが,ロンドンプロトコル(London<br />
Protocol)もその1つである.これはCharles<br />
Vincentらが 開 発 した 単 純 なモデルであり,これに<br />
従 うことで 医 療 チームは 臨 床 調 査 を 段 階 的 に 進 め<br />
ていくことができる.その 各 段 階 の 概 要 を 次 の 表<br />
B.5.1に 示 す.<br />
ボックスB.5.1<br />
ロンドンプロトコル<br />
調 査 プロセスの 詳 細<br />
調 査 対 象 のインシデントを 選 定 する<br />
事 例 記 録 をレビューする<br />
問 題 を 整 理 する<br />
スタッフにインタビューする<br />
発 生 の 経 緯 ― 医 療 のマネジメント 問 題 を 特 定<br />
する<br />
発 生 の 原 因 ― 発 生 に 寄 与 した 要 因 を 特 定 する<br />
事 例 の 分 析<br />
このプロトコルを 系 統 的 に 適 用 し,インタ<br />
ビューと 分 析 をしっかり 実 施 すれば, 比 較 的 単 純<br />
な 分 析 で 当 該 インシデントに 関 する 報 告 書 を 作<br />
成 でき,そのインシデントの 意 味 するものが 理 解<br />
できるはずである.インタビューと 分 析 が 完 了 す<br />
れば, 問 題 の 概 要 が 明 瞭 になり,その 事 態 を 招 い<br />
た 状 況 と 診 療 過 程 の 問 題 点 が 非 常 に 明 確 になる<br />
であろう. 報 告 書 の 最 後 のセクションでは, 当 該<br />
部 門 ないし 当 該 組 織 にとってそのインシデント<br />
がどのような 意 味 を 持 つかを 考 察 し, 対 応 措 置<br />
に 関 する 推 奨 策 を 作 成 する.<br />
SourceVincent C et al. How to investigate and analyse clinical incidentsclinical risk unit and association of litigation and<br />
risk management protocol. British Medical Journal, 2000, 320777–781.<br />
<strong>WHO</strong> 患 者 安 全 カリキュラムガイド 多 職 種 版<br />
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