WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...
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を 促 進 していくうえでは 患 者 自 身 の 役 割 が 重 要 に<br />
なるため, 患 者 の 話 から 学 んだ 内 容 は 大 半 の 学 生<br />
の 記 憶 に 残 ることになる. 患 者 の 心 配 や 疑 問 が 適 切<br />
に 対 応 されなかったために 有 害 事 象 が 発 生 したと<br />
いう 事 例 を 採 用 してもよい.<br />
現 状 の 医 療 システムでは, 患 者 とのパートナー<br />
シップの 構 築 に 有 用 となる 専 門 知 識 が 十 分 に 活 用<br />
されていない. 患 者 の 話 からは, 症 状 に 関 する 情 報 ,<br />
患 者 の 好 み,リスクに 対 する 考 え 方 などを 知 ること<br />
ができるが, 患 者 はそれ 以 外 にも, 予 期 せぬ 事 態 が<br />
起 こった 場 合 にそれを 検 知 して 報 告 するという 役<br />
割 も 果 たすことができる 9) .<br />
オープンディスクロージャー( 情 報 開 示 )<br />
9<br />
とは 何 か, 何 を 開 示 すべきか<br />
オープンディスクロージャー(open disc lo sure)<br />
とは, 治 療 結 果 が 悪 かったことを 患 者 やその 家 族 に<br />
伝 えるプロセスを 指 して 用 いられる 用 語 であり, 治<br />
療 中 の 疾 患 または 外 傷 から 想 定 された 不 良 な 転 帰<br />
を 告 げる 場 合 は 含 まない. 現 在 では 多 くの 国 々で<br />
オープンディスクロージャーに 関 するガイドライン<br />
が 作 成 および 運 用 されているが,これらのガイドラ<br />
インをめぐる 議 論 を 反 映 して,オープンディスク<br />
ロージャーにはさまざまな 定 義 が 存 在 する. 以 下 に<br />
オーストラリアにおけるオープンディスクロー<br />
ジャーの 定 義 を 示 す:<br />
患 者 に 関 係 するインシデントが 発 生 した 後 で, 患<br />
者 およびその 関 係 者 と 率 直 かつ 一 貫 性 したアプ<br />
ローチでコミュニケーションをとるプロセス.その<br />
過 程 には, 発 生 した 事 象 に 対 して 遺 憾 の 意 を 表 明 す<br />
る, 患 者 に 絶 えず 情 報 を 提 供 する, 類 似 インシデン<br />
トの 再 発 防 止 策 の 実 施 を 含 めて 調 査 結 果 のフィー<br />
ドバックを 行 う,などの 行 為 が 含 まれる. 提 供 する 情<br />
報 の 内 容 には, 問 題 のインシデントやその 調 査 から<br />
得 られた 情 報 のうち 患 者 安 全 の 改 善 を 目 的 とした<br />
医 療 システムの 変 更 に 関 係 する 事 項 も 含 まれる 10) .<br />
オープンディスクロージャーとは, 有 害 事 象 の 発<br />
生 後 に 患 者 やその 家 族 と 誠 実 なコミュニケーション<br />
を 取 ることであり, 責 任 の 所 在 を 明 らかにすること<br />
ではない. 誠 実 であるという 要 件 は 倫 理 的 な 義 務 で<br />
あり, 大 抵 は 倫 理 規 約 に 明 記 されている. 一 方 で,<br />
医 療 専 門 職 用 の 情 報 開 示 に 関 するガイドラインが<br />
まだ 作 成 されていない 国 も 多 い.これらのガイドラ<br />
インによって 解 決 すべき 質 問 として,「この 状 況 に<br />
おいて 正 しいことは 何 か」「 自 分 がよく 似 た 状 況 に<br />
置 かれたら 何 を 望 むであろうか」「 愛 する 人 が 有 害<br />
事 象 で 苦 しんでいたら, 自 分 は 何 を 望 むであろう<br />
か」などが 挙 げられる.<br />
患 者 は 有 害 事 象 の 開 示 や 有 害 でなかったインシデ<br />
ントを 招 いたエラーの 開 示 を 望 むか<br />
Vincentらが1994 年 に 発 表 した 画 期 的 な 研 究<br />
11)<br />
では, 医 学 的 な 傷 害 が 患 者 とその 親 族 に 与 えた 影<br />
響 の 大 きさと,それらのインシデントの 発 生 後 に 患<br />
者 側 が 法 的 措 置 を 取 った 理 由 が 調 査 され, 患 者 の<br />
役 割 や 体 験 の 精 力 的 な 研 究 のきっかけとなる 重 要<br />
な 知 見 が 明 らかにされた.Vincentらは,1992 年 に<br />
5つの 弁 護 士 事 務 所 を 通 じて 医 療 事 故 訴 訟 を 起 こ<br />
した 患 者 およびその 親 族 227 名 ( 標 本 全 体 466 名<br />
の48.7%)と 面 談 を 行 った.その 結 果 , 訴 訟 理 由 と<br />
なったインシデントにより 職 業 , 社 会 生 活 および 家<br />
族 関 係 に 深 刻 かつ 長 期 的 な 影 響 を 受 けていた 回 答<br />
者 が70% 以 上 に 上 ることが 判 明 した.この 調 査 結<br />
果 は,これらの 事 象 が 強 い 感 情 の 乱 れを 引 き 起 こ<br />
し, 長 期 間 にわたって 当 事 者 を 苦 しめ 続 けていたこ<br />
とを 意 味 している. 法 的 措 置 を 講 じるという 決 断 は,<br />
当 初 の 傷 害 を 根 拠 としていたが, 有 害 事 象 の 発 生<br />
後 に 患 者 たちが 受 けた 無 神 経 な 対 応 やコミュニ<br />
ケーションの 不 備 もまた 決 断 に 影 響 を 及 ぼしてい<br />
た. 病 院 側 からの 説 明 に 満 足 していた 回 答 者 は 全 体<br />
の15% 未 満 であった.<br />
訴 訟 理 由 の 分 析 では, 以 下 に 示 す4つの 主 要 テー<br />
マが 浮 上 した 11) :<br />
◦ 医 療 水 準 に 関 する 懸 念 : 患 者 と 親 族 も 類 似 イン<br />
シデントの 再 発 防 止 を 望 む<br />
◦ 説 明 の 必 要 性 : 傷 害 が 発 生 した 経 緯 と 原 因<br />
◦ 補 償 : 実 際 の 損 失 , 苦 痛 および 苦 悩 に 対 する 補<br />
償 ,もしくは 傷 害 を 受 けた 患 者 が 将 来 受 ける 医<br />
療 に 対 する 補 償<br />
◦ 説 明 責 任 :スタッフまたは 組 織 は 自 身 が 行 った<br />
行 為 について 説 明 しなければならないという<br />
考 え 方 . 患 者 は 病 院 側 に 対 して, 誠 実 な 態 度 と<br />
自 身 が 負 った 傷 害 の 重 症 度 に 関 する 正 しい 評<br />
価 ,そして 自 身 が 経 験 した 事 例 から 病 院 側 が 何<br />
らかの 教 訓 を 学 んだことの 保 証 を 求 めていた.<br />
有 害 事 象 を 経 験 した 患 者 が 望 むことは, 何 が 起 き<br />
たかの 説 明 , 責 任 の 受 け 入 れ, 謝 罪 , 類 似 事 象 の 再<br />
発 防 止 の 保 証 ,そして 場 合 により 懲 罰 および 補 償 で<br />
ある.<br />
有 害 事 象 の 発 生 後 に 患 者 に 対 して 誠 実 であること<br />
を 困 難 にする 主 な 事 由<br />
医 療 従 事 者 が 有 害 事 象 について 正 確 な 情 報 を 適<br />
<strong>WHO</strong> 患 者 安 全 カリキュラムガイド 多 職 種 版<br />
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