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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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3.5.2. 表 層 水 【 河 川 ・ 湖 沼 】 中 の 放 射 性 核 種<br />

訳 注 62<br />

3.5.2.1. 溶 存 態 と 粒 状 態 の 放 射 性 核 種 の 分 布<br />

地 表 にフォールアウトした 放 射 性 核 種 は、 土 壌 や 川 床 や 湖 底 の 堆 積 物 に 残 留 する。 河 川 や 湖 底 で<br />

の 放 射 性 核 種 の 移 動 は、この 残 留 の 度 合 いに 大 きく 左 右 される。 沈 着 した 放 射 性 核 種 の 一 部 は 表 層<br />

水 【 河 川 ・ 湖 沼 】を 浮 遊 する 粒 子 に 吸 着 され( 粒 子 密 度 は 表 層 水 中 で 大 きく 変 動 する)、これが 放<br />

射 性 核 種 の 移 動 と 生 物 濃 縮 に 強 く 影 響 する。ほとんどの 90 Srは 溶 存 態 として 存 在 しており、 溶 けず<br />

に 固 体 のままなのは0.05〜5%だが、 原 発 のすぐ 近 くは 例 外 で、フォールアウトしたストロンチウム<br />

の 大 部 分 は 燃 料 粒 子 に 含 まれた 形 【 不 溶 性 】であった。チェルノブイリ30km 圏 立 入 禁 止 区 域 (CEZ)<br />

の 土 壌 は、 90 Srにひどく 汚 染 されおり( 図 7.7 参 照 )、 汚 染 ストロンチウムの 一 部 は、 低 地 が 氾 濫 する<br />

と 洗 い 流 される。<br />

事 故 後 10 年 間 、プリピャチ 川 を 流 れる 放 射 性 セシウムの40%〜60%ほどが 水 に 溶 けずに 粒 子 の 形<br />

で 流 れた[3.97]。 他 の 河 川 の 推 定 値 は4%〜80%と 大 きくばらついたが[3.98]。この 値 は、 浮 遊 粒 子<br />

の 組 成 や 濃 度 に 依 存 し、 更 に 水 の 化 学 的 性 質 【pHや、 硬 水 ・ 軟 水 等 】に 依 存 する。 微 細 な 粘 土 粒 子<br />

やシルト 粒 子 【 砂 より 小 さく 粘 土 より 粗 い 砕 屑 物 】と、それより 大 きな 砂 粒 子 とでは、 反 応 性 の 低<br />

い 砂 粒 子 よりも、 粘 土 粒 子 やシルト 粒 子 のほうが、より 効 率 的 に 放 射 性 セシウムを 粒 子 表 面 に 吸 着<br />

する。よって、 砂 質 の 川 床 は、 原 子 炉 の 近 くですらあまり 汚 染 されなかった。 一 方 、 微 細 な 粒 子 は<br />

放 射 性 セシウムをかなり 遠 くまで 運 んだ。キエフ 貯 水 湖 の 湖 底 には 微 細 な 粒 子 が 堆 積 しつつあり、<br />

そのため、 湖 底 の 堆 積 物 は 高 濃 度 に 汚 染 されている。<br />

プリピャチ 川 の 放 射 性 核 種 の 溶 存 態 と 粒 子 態 の 分 布 を 測 定 すると、 浮 遊 粒 子 に 吸 着 する 強 さは 弱<br />

い 方 から、 90 Sr、 137 Cs、 他 の 超 ウラン 元 素 (ウラン 核 反 応 で 出 来 た 239,240 Puや 241 Am)の 順 に 強 くなる<br />

ことが 判 明 した[3.100]。 表 層 水 ( 河 川 ・ 湖 沼 )に 含 まれる 超 ウラン 元 素 も、 汚 染 土 壌 から 流 れ 出 た<br />

超 ウラン 元 素 も、その 化 学 的 安 定 性 が 有 機 物 を 含 む 自 然 なコロイドに 左 右 される 可 能 性 がある。た<br />

だし、この 影 響 は、 90 Srと 137 Csではあまり 重 要 ではない[3.101]。<br />

海 洋 では 一 般 的 に、 粒 子 吸 着 性 が 低 く、 競 合 イオンの 濃 度 が 高 い( 高 塩 分 )ので、 淡 水 に 比 べて<br />

訳 注<br />

浮 遊 粒 子 があまり 放 射 性 核 種 を 吸 着 しない 傾 向 にある 63 。バルト 海 の 場 合 、チェルノブイリ 事 故<br />

後 、 137 Csのうちの10% 以 下 しか 粒 子 に 吸 着 せず、 粒 子 として 存 在 する 割 合 は 平 均 1% 程 度 であった<br />

[3.102, 3.103]。 黒 海 だと、 137 Csのうち 粒 子 に 吸 着 したのは3% 以 下 であった[3.96]。<br />

訳 注 62: 水 に 何 かが 溶 ける 場 合 、 溶 け 切 る 量 には 限 りがあって、それを 超 える 分 は 溶 けきれずに 余<br />

る。この 時 、 溶 けた 状 態 であるか、 溶 けきれない 状 態 であるかによって、 汚 染 も 違 ってくる。<br />

訳 注 63: 競 合 元 素 (それが 水 に 溶 けて 電 離 したものが 競 合 イオン)とは、 放 射 性 核 種 と 化 学 的 性 質<br />

が 似 ていて、 二 次 汚 染 の 際 に 一 方 が 増 えればもう 一 方 が 減 る 関 係 にあるもの。ここではカリウム<br />

イオン(K+)やカルシウムイオン(Ca++)などを 指 す。3.3.4.1 節 を 参 照 。<br />

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