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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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1.2.1.4. 森 林 環 境<br />

チェルノブイリ 事 故 後 、 森 林 や 山 岳 地 域 では、 放 射 性 セシウムの 動 植 物 への 移 行 が 極 めて 酷 く、<br />

林 産 物 が 最 悪 の 放 射 能 値 を 記 録 した。これは 放 射 性 セシウムが 森 林 生 態 系 内 で 循 環 している 為 であ<br />

る。 137 Cs 放 射 能 が 特 に 強 いのは、キノコ、 野 いちご、 狩 猟 動 物 で、これらの 放 射 能 レベルは 事 故 以<br />

来 ずっと 強 いままである。 農 産 物 の 消 費 による 内 部 被 曝 は 年 々 減 っているものの、 林 産 食 品 の 放 射<br />

能 汚 染 は 高 レベルにとどまっており、 多 くの 国 々で 基 準 値 を 今 なお 超 えている。この 状 況 は 今 後 数<br />

十 年 にわたって 続 くと 思 われる。したがって、 被 害 国 の 複 数 で、 森 林 汚 染 による 住 民 の 被 曝 が 次 第<br />

に 重 要 になってきた。 林 産 食 品 の 放 射 能 汚 染 の 今 後 の 低 下 については、 基 本 的 に 137 Csが 土 壌 の 深 い<br />

所 へと 浸 透 下 降 するのと、 放 射 性 壊 変 による 減 衰 で 自 然 に 減 るのを 待 つしかない。<br />

ヨーロッパの 北 極 圏 内 外 では、チェルノブイリ 事 故 後 、 放 射 性 セシウムが 地 衣 類 からトナカイへ、<br />

トナカイ 肉 から 人 体 へという 経 路 で 移 行 することがあきらかになった。チェルノブイリ 事 故 により、<br />

フィンランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデンではトナカイ 肉 の 放 射 能 汚 染 が 酷 く、サーミ 人<br />

訳 注<br />

【ラップランド 原 住 民 】にとって 深 刻 な 問 題 となった 3 。<br />

材 木 や 木 製 品 の 使 用 による 一 般 人 への 被 曝 はほとんど 心 配 ない。しかし、 薪 類 を 燃 やしたあとの<br />

木 灰 は 高 濃 度 の 137 Csを 含 むと 予 想 され、 木 の 他 の 使 用 法 より 被 曝 が 大 きくなるリスクがある。 材 木<br />

に 含 まれる 137 Csは 余 り 問 題 にならないが、パルプ 工 場 内 の 被 曝 には 注 意 を 払 わなければならない。<br />

1992 年 には 森 林 火 災 によって 大 気 中 の 放 射 能 濃 度 が 上 昇 したがその 値 は 問 題 になるほど 高 くは<br />

ない。 森 林 火 災 によって 起 こりうる 放 射 線 の 影 響 について 色 々 議 論 されてきたが、 火 や 火 災 の 近 く<br />

を 除 けば、 汚 染 された 森 林 から 人 体 への 移 行 は 問 題 になるほどのレベルにはならないだろう。<br />

訳 注 3:サーミ 人 の 多 くがトナカイ 放 牧 で 生 計 を 立 てている。<br />

1.2.1.5. 水 域 環 境<br />

チェルノブイリ 原 子 炉 からの 放 射 性 核 種 は、 事 故 現 場 近 くの 地 域 のみならず、ヨーロッパの 他 の<br />

多 くの 場 所 で、 表 層 水 域 を 汚 染 した。 事 故 直 後 の 水 の 放 射 能 汚 染 は、 主 に 河 川 や 湖 の 水 表 面 へ 放 射<br />

性 核 種 が 直 接 沈 着 した 事 によるものであり、 汚 染 した 放 射 性 核 種 ・ 同 位 体 の 大 部 分 は 半 減 期 の 短 い<br />

もの(そのうち 最 も 重 要 なのは 131 I)である。 事 故 から 数 週 間 の 間 、キエフ 貯 水 池 からの 飲 料 水 汚 染<br />

が 特 に 懸 念 された。<br />

河 川 ・ 湖 沼 等 の 水 域 の 汚 染 は、 水 による 希 釈 【 流 入 や 深 層 への 撹 拌 】や、 放 射 性 壊 変 、 集 水 域 の<br />

土 壌 への 放 射 性 核 種 の 吸 着 によって、フォールアウト【 大 気 中 へ 吹 き 上 げられた 放 射 性 物 質 が 地 表<br />

に 降 下 すること】が 起 こってから、 数 週 間 のうちに 急 速 に 減 少 した。 湖 や 貯 水 湖 では、【 放 射 性 核<br />

種 を 吸 着 した】 浮 遊 粒 子 が 湖 底 に 堆 積 する 事 で、 水 中 での 放 射 能 濃 度 を 減 らすのに 貢 献 した。 湖 底<br />

訳 注<br />

堆 積 物 は 放 射 性 核 種 を 長 期 的 に 貯 める 場 所 として 重 要 である 4 。<br />

事 故 直 後 、 放 射 性 ヨウ 素 の 魚 による 摂 取 が 直 ぐに 起 こったが、 主 に 放 射 性 壊 変 による 減 衰 のお 陰<br />

で 放 射 能 濃 度 は 急 速 に 低 下 した。 旧 ソ 連 3 共 和 国 の 最 大 被 害 地 域 のみならず、スカンジナビアやド<br />

イツのような 遠 方 のいくつかの 湖 においても、 水 中 の 食 物 連 鎖 による 放 射 性 セシウムの 生 物 内 濃 縮<br />

で 魚 は 高 濃 度 に 放 射 能 汚 染 された。 魚 の 90 Sr 放 射 能 濃 度 は、 放 射 性 セシウムと 比 較 すると、そこま<br />

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