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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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訳 注 36: 農 水 省 のホームページ( 訳 注 21)に 出 ているのは 重 量 移 行 係 数 であるのに 対 し、この 報 告<br />

書 では 使 われているのは 面 移 行 係 数 なので、 混 同 されないように。<br />

訳 注 37: 競 合 イオンは 競 合 元 素 と 同 じく、 放 射 性 核 種 と 化 学 的 性 質 が 似 ていて、 汚 染 の 際 に 一 方 が<br />

増 えればもう 一 方 が 減 る 関 係 にあるもの。<br />

3.3.4.4. 農 作 物 への 放 射 性 核 種 の 移 行 の 起 こり 方<br />

農 作 物 中 の 137 Csの 量 は、 事 故 の 起 こった1986 年 に 最 大 となったが、この 時 は、 大 気 中 の 放 射 性 物<br />

質 が 直 接 植 物 に 吸 着 したのが 主 な 原 因 である。 事 故 翌 年 (1987 年 )になると 植 物 の 根 からの 吸 収 が<br />

主 要 な 汚 染 ルートとなったため、 農 作 物 中 の 137 Csの 量 は、3 分 の1〜100 分 の1に 低 下 した。 低 下 率 に<br />

大 きなバラツキがあるのは 土 壌 の 種 類 が 違 うためである。<br />

土 壌 へ 沈 着 してからの 数 年 間 の 牧 草 の 137 Csの 挙 動 は、 土 壌 と 落 葉 層 の 間 で 放 射 性 核 種 がどのよう<br />

に 分 布 したかに 大 きく 左 右 された。この 期 間 、 137 Csの 牧 草 への 取 り 込 みは、 落 葉 層 からが 圧 倒 的 で、<br />

訳 注<br />

土 壌 からの 取 り 込 みの8 倍 に 達 した 38 。 落 葉 層 の 分 解 に 伴 う、 放 射 性 核 種 の 土 壌 への 移 行 の 結 果 、<br />

落 葉 層 の 影 響 は 急 速 に 低 下 した。 事 故 から5 年 も 経 つと、 植 物 への 落 葉 層 の 寄 与 は、 自 成 土<br />

訳 注<br />

【automorphous soils】で6%、 半 水 成 土 【hydromorphous soils】で11% 以 下 となった 39 。<br />

137 Csの 植 物 への 面 移 行 係 数 は、ほとんどの 土 壌 で1987 年 以 降 ずっと 低 下 し 続 けている。ただし、<br />

低 下 率 は 図 3.24にも 示 されるように 次 第 に 緩 慢 になっている [3.55]。 図 3.24にも 示 されるような『 数<br />

年 の 急 減 少 の 後 の 下 げ 止 まり』は、 他 の 農 作 物 でもみられ、その 例 として、 図 3.25と 図 3.26に、2 種<br />

訳 注<br />

の 土 壌 で 育 てた 穀 類 と 野 草 について 示 す 40 [3.56]。 尚 、 図 3.25の 図 中 で、18 年 目 の 青 印 と20 年 目 の<br />

青 印 ( 大 陸 型 黒 土 【chernozem soil】に 対 応 )は、18 年 目 と20 年 目 の 測 定 データではなく、 事 故 の 前<br />

の1980〜1985 年 に 行 われた 測 定 値 ( 大 気 内 核 実 験 のフォールアウトの 後 でチェルノブイリ 事 故 の 前<br />

の 137 訳 注<br />

Csの 面 移 行 係 数 )を 比 較 対 象 として 加 えたものである 41 。 図 3.24〜 図 3.26に 示 すように、 137 Cs<br />

の 穀 物 ( 図 3.25 参 照 )、ジャガイモ( 図 3.24 参 照 )、 牛 乳 などのミルク【 正 確 には 牧 草 : 図 3.26】への<br />

面 移 行 係 数 は、 原 発 から 数 百 キロ 離 れた 地 域 の、 砂 質 土 【sandy soil】、 砂 質 ローム 土 【sandy loam soil】、<br />

大 陸 型 黒 土 【chernozem soil】で、 大 気 核 実 験 のフォールアウトの20 年 後 の 値 と8~9 年 後 の 値 、また、<br />

チェルノブイリの 事 故 によるフォールアウト 後 の 値 でほとんど 変 わっていない [3.56, 3.57]。また、<br />

施 肥 された 土 壌 で 栽 培 された 穀 物 間 の 面 移 行 係 数 の 違 いは、 痩 せた 土 地 で 育 つ 雑 草 【 牧 草 】 間 の 面<br />

移 行 係 数 の 違 いよりもはるかに 小 さい。<br />

放 射 性 セシウムの 土 壌 から 農 作 物 への 移 行 の 年 次 減 少 には、 次 の 原 因 が 考 えられる。 (a) 放 射 性<br />

壊 変 による 放 射 性 核 種 そのものの 減 少 。 (b) 植 物 の 根 が 張 る 層 より 深 い 土 層 への 放 射 性 核 種 の 移 動 。<br />

訳 注<br />

(c) 土 壌 成 分 との 物 理 的 ・ 化 学 的 な 作 用 の 変 化 に 伴 う、 取 り 込 みの 効 率 の 変 化 42 。 植 物 の 根 による<br />

放 射 性 セシウムの 取 り 込 みは、 多 くの 土 壌 で 時 間 と 共 に 減 少 していくが、その 減 り 方 は 二 成 分 で 特<br />

徴 づけられる。 (A) 初 めの4~6 年 間 の 半 減 期 が0.7~1.8 年 の 比 較 的 早 い 減 少 で、1987 年 に 比 べて 農<br />

作 物 中 の 放 射 能 濃 度 が 一 桁 近 く 落 ちる。 (B)その 後 のゆっくりした 減 少 で 半 減 期 が7~60 年 の 間 の<br />

成 分 [3.45、3.55、3.57、3.58]。 土 壌 から 農 作 物 への 137 Csの 取 り 込 み【 移 行 係 数 】が 実 際 にどのよう<br />

に 減 少 していくかは、 土 壌 の 性 質 に 大 きく 左 右 され、 移 行 係 数 の 減 少 速 度 は、 植 物 により3〜5 倍 も<br />

異 なり 得 る[3.41]。<br />

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