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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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に 達 する 可 能 性 もあるが、その 種 の 臨 界 事 故 の 可 能 性 は 低 いと 考 えられる。しかし、もし 実 際 に 起<br />

こったとしても、4 号 炉 で 働 く 何 人 かの 作 業 員 が 数 ミリシーベルトの 外 部 被 ばくを 受 けるに 過 ぎな<br />

い。なぜなら、 作 業 員 は 臨 界 の 可 能 性 がある 区 域 に 近 寄 らない 傾 向 があるからである。そのような<br />

場 合 、CEZ の 内 外 で 深 刻 な 事 態 には 至 らないと 推 測 されている[7.5,7.8,7.9]。<br />

近 年 、 石 棺 シェルターの 状 況 を 安 定 化 し、 改 善 するために 数 多 くの 作 業 が 実 施 された。これらに<br />

含 まれるものは、3、4 号 炉 の 換 気 用 煙 突 の 基 礎 および 支 柱 の 修 理 、B1、B2 ビーム【 梁 】の 補 強 ( 図<br />

7.4)、 核 物 質 防 護 とアクセス 制 御 システムの 改 善 、 総 合 的 自 動 制 御 システムの 設 計 ( 制 御 対 象 は 建<br />

物 の 構 造 の 状 態 の 管 理 、 地 震 に 対 する 管 理 、 原 子 力 ・ 放 射 線 に 対 する 安 全 管 理 )、 粉 塵 飛 散 抑 制 シ<br />

ステムの 更 新 、 構 造 安 定 性 の 補 強 である。さらに、 石 棺 シェルターにはガンマ 線 放 射 線 量 、 中 性 子<br />

線 束 、 温 度 、 熱 流 量 、 水 素 や 一 酸 化 炭 素 の 濃 度 や 湿 度 、そして 構 造 体 の 力 学 的 安 定 性 等 を 監 視 する<br />

原 注<br />

目 的 でコンピュータ 制 御 システムも 導 入 された[7.9]。これらはウクライナおよび 支 援 国 2 からの<br />

多 大 な 援 助 を 受 けて 実 現 した。<br />

将 来 的 に 起 こり 得 る 石 棺 シェルターからの 放 射 性 核 種 放 出 の 規 模 や 重 大 さ(もし 石 棺 シェルター<br />

が 崩 壊 した 場 合 )は、 石 棺 シェルター 内 部 から 発 生 しかねない 粉 塵 を 含 む 放 射 性 物 質 の 放 射 線 特 性<br />

または 物 理 化 学 的 特 性 に 強 く 依 存 する。 事 故 から 20 年 経 過 しようとしている 今 、 粉 塵 はコンクリ<br />

ート 壁 や 床 、そして 天 井 を 透 過 して、エアロゾルという 形 で 大 気 中 に 存 在 する。したがって、 石 棺<br />

シェルター 内 部 の 多 くの 地 点 で、 核 燃 料 を 含 んだ 粉 塵 は 放 射 線 災 害 の 主 因 とされている。 研 究 [7.5,<br />

7.10]によると、これらの 粒 子 の 大 きさ( 空 気 力 学 的 放 射 能 中 央 径 )は 典 型 的 に 1~10 µm である。<br />

よって、これらの 物 質 はほとんど 吸 入 可 能 であり、 吸 入 災 害 の 危 険 性 を 増 大 させる。 吸 入 災 害 の 危<br />

険 性 は、 石 棺 シェルターの 屋 根 が 崩 壊 する 際 に 発 生 する 風 によって 増 加 する。<br />

もし 石 棺 シェルターが 崩 壊 するなら、 継 続 中 の 事 故 復 旧 努 力 に 悪 影 響 を 与 えかねず、 発 生 する 放<br />

射 性 粉 塵 雲 は 有 害 な 環 境 影 響 を 生 ずるだろう。 環 境 中 への 放 出 を 更 に 解 析 する 際 に 特 に 効 くのが、<br />

崩 壊 の 結 果 として 発 生 する 粉 塵 雲 内 のソースタームをどう 仮 定 するかである。 放 射 性 粉 塵 の 環 境 中<br />

への 放 出 予 測 は、 研 究 によって 約 500〜2000 kg と 異 なり、そこに 含 まれ 得 る 微 細 化 して 分 散 した 核<br />

燃 料 の 量 も 約 8〜50 kg と 広 がりがある。ソースタームの 仮 定 に 関 わらず、 崩 壊 時 に 大 気 中 を 上 昇 す<br />

るほぼすべての 物 質 は CEZ 内 に 沈 着 すると 予 想 されている[7.11,7.12]。<br />

FCM に 関 連 したもう 一 つの 懸 念 事 項 は、FCM が 石 棺 シェルターを 出 て 貯 留 水 経 由 で 地 下 水 に 移<br />

動 する 可 能 性 である。4 号 炉 内 で 固 化 した 核 燃 料 溶 融 流 の 表 面 に 明 るい 黄 色 のシミと FCM の 細 く<br />

なった 断 片 が 発 見 された 事 で、FCM が 貯 留 水 に 溶 け 込 み 得 ることが 確 認 された[7.3]。その 後 の 分 析<br />

により、 溶 解 性 のウラニウム 化 合 物 の 存 在 が 確 認 された。この FCM は 非 常 に 溶 解 しにくいガラス<br />

状 の 物 質 と 最 近 まで 考 えられていた。 事 実 、FCM から 放 射 性 核 種 や 90 Sr のような 易 動 性 放 射 性 核<br />

種 が 浸 出 して 移 動 し、プリピャチ 川 にたどり 着 く 可 能 性 は 非 常 に 低 いと 予 測 されていた[7.9]。しか<br />

し、この 現 象 の 重 要 性 は 未 知 のため、 石 棺 シェルターとその 周 囲 における 地 下 水 の 経 過 状 況 を 監 視<br />

することは 重 要 である。<br />

さらなる 調 査 により、 地 下 水 位 は 最 近 の 数 年 間 、 最 高 1.5 m 上 昇 して 地 表 下 およそ 4 m の 深 さに<br />

達 し、 今 も 上 昇 を 続 けている 可 能 性 が 示 された。この 現 象 は、 地 下 水 によるキエフ 貯 水 池 の 汚 染 の<br />

可 能 性 を 防 ぐために 4 号 炉 の 周 囲 に 建 設 された、 長 さ 3.5 km、 深 さ 35 m の 地 下 壁 に 起 因 すると 考<br />

えられている[7.9]。<br />

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