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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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ロメートル 離 れた 場 所 の 中 には 137 Csによる 沈 着 が1 MBq/m 2 【=1000kBq/m 2 =10 6 Bq/m 2 】という 高 濃 度<br />

の 所 もあった[3.12, 3.13]。<br />

降 下 物 に 関 して、もうひとつ 重 要 なのは、その 水 溶 性 【どのくらい 水 に 溶 けやすいか】である。<br />

土 壌 や 表 面 水 【 河 川 、 湖 等 】に 沈 着 した 放 射 性 核 種 が、 沈 着 直 後 の 早 い 時 期 にどの 程 度 【 環 境 内 を】<br />

移 動 して 生 物 に 摂 取 されるかは、 放 射 性 核 種 の 種 類 よりも、その 核 種 が 水 に 溶 けやすい 形 かどうか、<br />

水 に 溶 け 難 いかどうかで 決 まる【3.3-3.5 節 に 詳 述 する】。1986 年 4 月 26 日 から5 月 6 日 の 期 間 、チェル<br />

ノブイリの 気 象 観 測 所 において 降 下 物 のサンプルが24 時 間 おきに 採 取 されたが、 137 Csのうち、 水 に<br />

溶 けやすくイオン 化 しやすい 形 態 でフォールアウトした 比 率 は(この 時 の 判 定 条 件 は、1モル/リッ<br />

トルの 酢 酸 アンモニウムCH 3 COONH 4 に 溶 けるかどうか)、 137 Csの5%から30% 以 上 にわたる 幅 広 い<br />

値 を 示 していた[3.14]。 90 Srについては、4 月 26 日 の 沈 着 では、 水 に 溶 けやすくイオン 化 しやすい 形<br />

態 だったのは 全 体 の1% 未 満 だったが、この 値 は 数 日 後 に5%から10%に 増 加 した。<br />

原 子 力 発 電 所 近 くで 飛 散 した 137 Csや 90 Srは 水 に 溶 け 難 い 形 態 をしていた。この 事 から、 発 生 源 か<br />

ら20 km 離 れた 地 点 でも、 降 下 物 の 大 部 分 が 燃 料 粒 子 であった 事 がわかる【 元 素 が 裸 でないから 水<br />

に 溶 け 難 い】。 137 Csや 90 Srのうち、 水 に 溶 けやすくイオン 化 しやすい 形 態 の 割 合 は、20 kmよりも 近<br />

い 地 点 では、 大 きな 粒 子 の 存 在 割 合 が 高 くなるため,さらに 低 かったと 思 われる。 逆 に 原 子 炉 から<br />

遠 い 距 離 では、 水 に 溶 けやすい 形 態 【 気 化 したのが 再 凝 縮 したもの】の 比 率 が 高 くなった。 一 例 を<br />

あげるなら、1986 年 に 英 国 内 に 沈 着 した 137 Csのほとんどが 水 に 溶 けやすくイオン 化 しやすいものだ<br />

った。<br />

訳 注 6: 例 えばXe(キセノン)は 揮 発 性 が 高 く 半 減 期 も5 日 しかないので、 放 出 量 がいくら 多 くても<br />

フォールアウトで 地 上 を 汚 染 する 量 は 少 ない。<br />

訳 注 7: 蒸 発 の 反 対 の 事 で、 気 化 していたものが 液 体 になること、 例 えば 朝 露 など。<br />

3.1.3. 事 故 発 生 時 の 気 象 条 件<br />

訳 注<br />

事 故 発 生 時 、ヨーロッパのほとんどが 高 気 圧 に 覆 われていた 8 。チェルノブイリ 原 発 は 高 気 圧<br />

帯 の 南 西 部 周 縁 に 当 たり、 原 発 上 空 は 高 度 700~800 mでも 高 度 1500 mでも、 南 東 から 北 西 への 風 ( 空<br />

気 塊 )が 秒 速 5~10 mで 吹 いていた。<br />

訳 注<br />

一 方 、 夜 明 けの 時 点 で、 大 気 の 混 合 層 の 高 さは2500 mであった 9 。その 結 果 、 混 合 層 まで 達 し<br />

た 放 射 性 ダストは、そこで 急 速 に 撹 拌 されて、 混 合 層 全 体 【 厚 み 方 向 】に 放 射 性 プルーム【 水 滴 の<br />

代 わりに 放 射 性 ダストを 主 体 とする 雲 、 放 射 性 ダスト 雲 】として 広 がった。 一 方 、 高 度 700~1500 m<br />

にまでしか 昇 らなかった 汚 染 粒 子 は、そこで 風 【 大 気 塊 の 移 動 】に 乗 って、まず 北 東 方 向 、 続 いて<br />

北 方 向 へと 広 がった。この 放 射 性 プルームはスカンジナビア 諸 国 で 観 測 された。<br />

このように、4 月 26 日 に 地 表 面 にあった 大 気 塊 【 放 射 性 ダストを 多 く 含 む】は、 西 ~ 北 西 へと 運<br />

ばれ、4 月 27 日 から29 日 にかけてポーランドやスカンジナビア 諸 国 へ 到 達 した。ウクライナの 南 部<br />

と 西 部 、モルドバ、ルーマニア、スロバキア、そしてポーランドは、 気 圧 勾 配 の 弱 い 状 態 【 大 気 が<br />

安 定 し 風 が 吹 きにくい 状 態 】だった。この 後 、アイスランド 付 近 の 大 型 低 気 圧 【サイクロン】がゆ<br />

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