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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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計 測 法 だったが、 試 料 中 の 様 々な 核 種 を 検 出 するために、ベータ 線 のスペクトル 計 測 を 採 用 した<br />

検 査 室 もあった。 核 種 の 組 成 が 既 知 の 場 合 は、ベータ 線 放 射 能 の 全 量 測 定 も 用 いられた。 未 加 工<br />

の 畜 産 物 (ミルク、 肉 など) 中 の 137 Csの 測 定 は、いずれの 計 測 でも 実 施 された。 被 曝 線 量 予 測 に<br />

あたって、1986 年 以 降 実 施 されてきた 数 百 万 にのぼるこうした 計 測 のデータが 利 用 できる。 食 品<br />

中 の 放 射 性 核 種 の 計 測 の 包 括 的 なデータは、 地 上 環 境 に 関 する 章 【3 章 と4 章 】に 記 してある。<br />

水 溶 性 の 放 射 性 核 種 ( 主 に 131 I、 134,137 Cs、および 90 Sr)の 飲 料 水 中 の 濃 度 は、1986 年 に 地 表 水 源<br />

と 地 下 水 源 の 両 者 で 測 定 された(3.5 節 参 照 )。それ 以 後 については、 飲 料 水 中 の 放 射 能 濃 度 は 相<br />

対 的 に 低 いレベルまで 低 下 し、 内 部 被 曝 への 寄 与 は、 食 品 摂 取 に 由 来 するものと 比 べると 大 抵 は<br />

無 視 できる 程 度 だった。<br />

1986 年 の5 月 から6 月 に、 放 射 性 核 種 の 沈 着 が 多 かった 地 域 の 住 民 を 対 象 に、 甲 状 腺 内 の 131 Iの 計<br />

測 が 行 われた。 被 害 がもっとも 大 きかった3カ 国 では 合 計 300,000 以 上 実 施 され、 他 のヨーロッパ<br />

諸 国 でも 相 当 な 数 が 実 施 され、 特 に 小 児 や 若 者 に 重 点 が 置 かれた。こうした 大 規 模 測 定 のデータ<br />

は、 注 意 深 く 較 正 された 上 で、 甲 状 被 曝 線 量 の 再 構 築 の 際 に、 中 心 的 なデータとなった。<br />

ヨーロッパの 様 々な 国 で1986 年 以 降 数 多 く 実 施 された 全 身 計 測 の 多 くは、 134,137 Csの 測 定 を 目 的<br />

としたものであった。 計 測 数 は100 万 を 超 えたが、その 多 くは 被 害 が 最 も 大 きかった3カ 国 で 実 施<br />

された。 測 定 データは、 放 射 性 核 種 の 摂 取 に 関 するモデルの 検 証 や、 被 爆 防 護 策 の 有 効 性 の 評 価<br />

のために 幅 広 く 利 用 された。ベラルーシ、ロシアおよびウクライナの 最 も 汚 染 された 地 域 では、<br />

放 射 線 防 護 上 のみならず、 疫 学 調 査 の 一 環 として、 被 曝 線 量 をより 正 確 に 推 定 する 必 要 があり、<br />

その 為 にこれら 全 身 計 測 のデータが 用 いられた。<br />

90 Srおよびプルトニウムといった 核 種 は、ガンマ 線 を 放 出 しないため 全 身 計 測 器 での 検 出 に 適 さ<br />

ないので、 排 泄 物 のサンプルと、 更 に1990 年 以 後 は 死 体 解 剖 で 採 取 されたサンプルで 計 測 された。<br />

90 Sr/ 90 Y 含 有 量 の 測 定 には、 人 間 の 骨 組 織 の 数 百 のサンプルが 放 射 化 学 的 方 法 で 分 析 された。プル<br />

トニウム 核 種 の 放 射 能 については、 人 間 の 肺 、 肝 臓 および 骨 の 数 十 のサンプルでの 測 定 がなされ<br />

た。<br />

モニタリングプログラムは、 規 模 を 縮 小 しながらも、 放 射 線 防 護 と 環 境 修 復 対 策 の 正 当 性 を 確<br />

認 するため、 被 害 地 域 において 継 続 されている。<br />

5.3.3 人 間 の 行 動 による 被 曝 の 低 減<br />

居 住 環 境 や 農 業 食 品 の 除 染 のために 実 施 された 各 種 対 策 に 加 えて、 事 故 後 の 人 間 の 慣 習 の 変 化<br />

も、 汚 染 地 域 の 住 民 の 被 曝 線 量 を 低 減 するのに 有 効 であった。 事 故 直 後 に 最 も 明 らかに 有 効 な 手<br />

段 は、 131 Iの 摂 取 を 減 らすためにミルクの 摂 取 をやめることだったろう。しかしその 有 効 性 につい<br />

てはきちんと 文 書 化 されていないし、3カ 国 の 住 民 のうちで 時 宜 にかなってこれを 奨 励 されたの<br />

は、 被 害 が 大 きかった 地 域 の 一 部 だけだった。<br />

長 期 的 にみると、 134.137 Csによる 汚 染 が 大 きいことが 判 明 している 食 品 の 消 費 量 を 減 らすという<br />

手 だてが、より 有 効 であったように 思 われる。これらの 食 品 の 典 型 例 として、 汚 染 地 域 で 生 産 さ<br />

れたミルクや 牛 肉 、あるいは「 野 生 」 種 の 食 品 、つまり 狩 猟 で 採 った 鳥 獣 の 肉 やキノコおよび 野<br />

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