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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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で 大 きな 内 部 被 曝 を 引 き 起 こさなかった。その 理 由 は、 全 般 的 に 地 表 汚 染 量 がセシウムより 少 なく、<br />

その 為 、 生 物 内 濃 縮 量 も 少 なめだったのと、 90 Srが 食 用 となる 魚 肉 よりも 骨 の 部 分 に 蓄 積 されたか<br />

訳 注<br />

らである 5 。<br />

長 期 的 には、 半 減 期 の 長 い 137 Csや 90 Srが 汚 染 土 壌 から 洗 い 流 されることによる 二 次 汚 染 や、 汚 染<br />

濃 度 の 高 い 湖 底 堆 積 物 から 汚 染 濃 度 の 低 い 水 中 への 再 放 出 は、 量 的 に 少 ないといえども、 今 なお 続<br />

いている。 土 壌 から 放 射 性 セシウムが 洗 い 流 されて 表 層 水 へと 流 入 する 量 は、 集 水 域 の 土 壌 が 未 分<br />

解 の 有 機 物 を 多 く 含 む 泥 炭 質 の 場 合 【 痩 せた 土 地 】の 方 が、 土 壌 にミネラルが 多 い 場 合 【 肥 えた 土<br />

地 】よりも、はるかに 多 い。もっとも、 現 時 点 での 表 層 水 の 放 射 能 濃 度 は 十 分 に 低 く、 表 層 水 によ<br />

る 灌 漑 は 問 題 ないとされている。<br />

チェルノブイリ 原 発 近 隣 の 川 や 湖 の 水 底 に 堆 積 した 燃 料 粒 子 は、 地 表 の 土 壌 における 燃 料 粒 子 と<br />

比 較 して、あまり 風 化 ・ 分 解 されない。 推 定 の 燃 料 粒 子 が 半 分 に 分 解 するのにかかる 時 間 は、 90 Sr<br />

や 137 Csの 半 減 期 【 約 30 年 】とだいたい 同 じである。<br />

河 川 ・ 貯 水 湖 ・ 水 の 出 入 りの 多 い 湖 沼 などの 開 放 性 水 域 の 水 や 魚 の 137 Cs 放 射 能 濃 度 と 90 Sr 放 射 能<br />

濃 度 は 現 時 点 では 低 い。しかし、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの 湖 には 非 常 に 汚 染 された 湖 も<br />

いくつかあり、いずれも 水 の 流 入 や 流 出 が 少 ない 閉 鎖 性 湖 沼 である。しかも、これらの 汚 染 湖 は 栄<br />

養 塩 に 乏 しく、 中 には、 魚 の 137 Cs 放 射 能 濃 度 が 将 来 に 渡 って 高 いままの 湖 もあるだろう。 閉 鎖 性 湖<br />

沼 (たとえばロシア 連 邦 のKozhanovskoe 湖 )の 近 くの 住 民 の 中 には、 137 Csによる 内 部 被 曝 の 大 半 が<br />

魚 を 食 べる 為 である 人 々もいる。<br />

黒 海 やバルト 海 はチェルノブイリ 原 発 から 遠 く【 数 百 キロの 距 離 】、 膨 大 な 海 水 による 希 釈 効 果<br />

もあって、 海 水 中 の 放 射 能 濃 度 は 淡 水 よりもかなり 低 かった。 海 水 中 の 放 射 能 濃 度 が 低 い 上 、 海 洋<br />

訳 注<br />

生 物 でのセシウムの 生 体 凝 縮 が 低 いため 6 、 海 水 魚 における 放 射 能 濃 度 は 問 題 にはならなかった。<br />

訳 注 4: 地 下 水 に 関 するまとめは3.5.5 節 を 参 照 のこと。<br />

訳 注 5: 日 本 と 違 い、 煮 干 しやイワシなど 骨 ごと 食 べる 魚 文 化 は 西 洋 にはないので、 原 文 には 骨 に<br />

対 する 警 告 がない。 日 本 に 当 てはめると 魚 の 骨 に 気 をつけるべきということになる。<br />

訳 注 6: 海 水 にはセシウムと 化 学 的 性 質 の 似 たカリウムイオン、ストロンチウムと 化 学 的 性 質 の 似<br />

たカルシウムイオンが 大 量 にあるため、それらをあまり 区 別 しない 魚 はセシウムやスロトンチ<br />

ウムの 代 わりにカリウムやカルシウムを 取 り 込 む。 詳 細 は3.5.4 節 参 照 。<br />

1.2.2 将 来 の 研 究 や 継 続 的 な 測 定 【モニタリング】のための 提 言<br />

1.2.2.1. 総 論<br />

本 報 告 書 の 対 象 となった 各 生 態 系 は、チェルノブイリ 事 故 以 来 、 集 中 的 に 調 査 ・ 研 究 されてきた。<br />

それにより、 半 減 期 の 長 い 放 射 性 核 種 の 中 でも 最 も 重 要 な 137 Csと 90 Srに 関 しては、その 移 行 や 生 物<br />

濃 縮 はかなり 良 く 分 かっている。したがって、 生 態 系 における 放 射 性 核 種 の 移 行 に 関 しては、 新 た<br />

に 研 究 計 画 を 緊 急 に 組 む 必 要 はない。しかし、 環 境 のモニタリングは、 今 後 も 限 られた 範 囲 で 続 け<br />

る 必 要 があり、 他 にも 研 究 がまだまだ 必 要 な 対 象 も 残 っている。これら 課 題 を 以 下 にまとめる。<br />

放 射 性 核 種 ( 特 に 137 Csと 90 Sr)の 測 定 を、 各 環 境 の 様 々な 地 点 【『 農 業 環 境 』の 中 の『 痩 せた 土 壌 』<br />

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