30.12.2014 Views

チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

図 3.40.: 茸 5 種 類 の 137 Cs 濃 度 の 推 移 ( 事 故 後 4 年 ~12 年 )。 乾 燥 茸 による 測 定 値 で、 単 位 はBq/kg。 測<br />

定 はチェルノブイリ 原 発 から130 km 南 西 のウクライナ、ズトミュール 州 (Zhytomyr)の 松 林 。1986<br />

年 時 の 土 壌 の 137 Cs 濃 度 は 555 kBq/m 2 。[ 文 献 3.68より 引 用 ]【 測 定 開 始 の1991 年 以 降 、 僅 かにしか 減<br />

っていない。】<br />

森 林 の 自 生 茸 の 汚 染 は、コケモモのような 森 林 産 の 野 いちごよりもはるかに 汚 染 されている 事 が<br />

多 い。これは、 野 いちごが 茸 ほどには 放 射 性 セシウムを 取 り 込 まない 事 を 反 映 しており、 実 際 、 土<br />

壌 から 野 いちごへの 放 射 性 セシウムの 面 移 行 係 数 は0.02〜0.2 m 2 /kgと 茸 よりも 低 い[3.81]【 農 産 品 と<br />

比 べてもあまり 差 がない】。 野 いちごの 放 射 性 セシウムのレベルが 茸 よりもおおむね 低 い 事 と、 野<br />

いちごの 消 費 量 が 茸 よりも 少 ない 事 から、 野 いちご 経 由 の 内 部 被 曝 の 危 険 性 は 茸 よりも 少 ない。し<br />

かし、 両 方 とも、 野 生 動 物 や 半 野 生 の 放 牧 畜 がよく 食 べるものであり、これらの 動 物 が、 狩 猟 など<br />

を 経 て 人 体 の 内 部 被 曝 を 起 こす 口 経 媒 体 となる 可 能 性 がある。 実 際 、 森 などの 自 然 地 で 育 った 動 物<br />

の 肉 は、 高 い 放 射 性 セシウムレベルを 示 す 事 が 多 い。この 種 の 動 物 の 例 としてはイノシシ、ノロジ<br />

カ、ヘラジカ、トナカイがあげられる【このうちトナカイは 半 野 生 の 放 牧 畜 である】。<br />

一 方 、 牛 や 羊 などの 家 畜 も、 森 林 の 縁 辺 部 で 食 べ 漁 る 事 があるから、 同 じタイプの 汚 染 がありう<br />

る。シカやヘラジカなどの 狩 猟 獣 の 汚 染 に 関 するデータは、これらを 狩 猟 して 食 べる 事 の 多 い 西 ヨ<br />

ーロッパ 諸 国 で 主 に 得 られている【 国 によっては 野 生 ヘラジカの 肉 がスーパーで 売 っているほどに<br />

狩 猟 が 一 般 的 である】。 野 生 ・ 半 野 生 動 物 の 放 射 性 セシウムの 量 は 季 節 毎 に 大 きく 変 動 している。<br />

これは 自 生 茸 や 地 衣 類 などの 食 べ 物 が、 特 定 の 季 節 にしか 生 えないからである。ちなみに、 地 衣 類<br />

はトナカイの 栄 養 源 として 重 要 である。これらの 動 物 の 汚 染 データは 北 欧 諸 国 とドイツで 得 られて<br />

いる。 図 3.41はスウェーデンのヘラジカのセシウム 放 射 能 の 年 平 均 値 である。このデータは、1986<br />

年 〜2003 年 の 間 にスウェーデンの 一 つの 狩 猟 地 域 でヘラジカについて 調 べて 得 たものである。 図<br />

3.42は 南 部 ドイツにおけるノロジカの 137 Cs 濃 度 のデータで、 調 べた 部 位 は 筋 肉 である。 茸 の 放 射 性<br />

セシウム 濃 度 が 高 い 為 、それを 食 べる 狩 猟 獣 、 特 にノロジカも 放 射 能 に 汚 染 されている。スウェー<br />

デンの 土 壌 からヘラジカへの 面 移 行 係 数 は0.006〜0.03 m 2 /kg[3.81]である。その 年 平 均 値 は、 汚 染 当<br />

初 以 来 おおむね 減 り 続 けており、このことから、 137 Csの 生 態 学 的 半 減 期 が、 137 Csの 物 理 的 半 減 期 (30<br />

年 )よりも 短 いことが 分 かる。<br />

77

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!