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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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イチゴ【ベリー】が 挙 げられる。ただし 事 故 後 長 い 年 数 を 経 ると、 経 済 状 態 の 悪 化 や、 野 生 食 品<br />

に 対 する 人 々の 注 意 が 徐 々に 低 下 し、こうした 自 主 規 制 はあまり 遵 守 されなくなった。<br />

5.3.4. 個 人 の 被 曝 線 量 に 関 する 調 査 結 果<br />

5.3.4.1. 放 射 性 ヨウ 素 由 来 の 甲 状 腺 被 曝 線 量<br />

事 故 の 主 な 影 響 の 一 つとして、 人 の 甲 状 腺 の 被 曝 があげられる。ヨウ 素 の 食 物 連 鎖 中 の 移 動 の<br />

速 さにくわえ、 131 Iの 半 減 期 が8 日 と 短 く、それ 以 外 の 放 射 性 ヨウ 素 の 半 減 期 も 短 いので、 被 曝 線<br />

量 の 蓄 積 は 比 較 的 急 速 におきる。 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 重 要 性 は 世 界 各 国 の 専 門 家 に 認 知 されており、<br />

初 期 の 努 力 はこの 臓 器 に 焦 点 を 当 てたものとなった。 小 児 および 成 人 が 被 曝 した 甲 状 腺 被 曝 線 量<br />

の 国 家 毎 の 推 定 平 均 値 が、UNSCEAR[5.2] によって 公 表 されている。1990 年 代 初 頭 に、チェルノ<br />

ブイリ・フォールアウトで 汚 染 されたベラルーシ、ロシアおよびウクライナの 諸 地 域 で 生 活 する<br />

小 児 や 若 者 の 甲 状 腺 癌 の 罹 患 率 が 上 昇 していることが 発 見 され、それ 以 来 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 評 価<br />

に 特 に 注 意 が 払 われている。<br />

放 射 線 疫 学 的 な 調 査 の 進 捗 とともに、 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 主 要 規 定 因 子 と 算 定 方 法 は、1990 年 代<br />

には 報 告 され [5.33-5.35]、 文 献 [5.1] に 要 約 されている。しかし 最 近 になっても、この 分 野 での<br />

重 要 な 業 績 がみられる[5.43-5.45]。 内 部 被 曝 線 量 算 定 の 一 般 的 なアプローチは、 文 献 [5.46]で 詳 述<br />

されている。<br />

チェルノブイリの 被 害 住 民 の 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 算 定 方 法 は、 米 国 やEUの 専 門 家 の 参 画 のもと、<br />

ベラルーシ、ロシア、およびウクライナで、 同 時 平 行 して 整 備 された。3ヶ 国 の 方 法 論 には、 多<br />

くの 共 通 点 があるものの、いくつかの 重 大 な 違 いもあり、このために 本 来 望 まれるそれらの 統 合<br />

が 困 難 になっている。まず、3ヶ 国 すべてで、 質 に 違 いはあるものの、 131 Iの 甲 状 腺 計 測 の 数 万 の<br />

結 果 が 利 用 可 能 であり、それが 甲 状 腺 被 曝 線 量 算 定 の 基 礎 データとして 用 いられている。ロシア<br />

では、これに 加 えて、ミルク 中 の 131 Iのデータも 用 いられた。 人 体 および 環 境 中 の 131 Iの 計 測 結 果 を<br />

用 いて 算 定 されたこの 被 曝 線 量 は、 控 えめな 推 定 値 というより 実 際 の 値 に 近 い。<br />

一 つの 集 落 あるいは 近 隣 しあう 集 落 群 において 年 齢 層 がいくつか 設 定 され、これが 平 均 的 な 甲<br />

状 腺 被 曝 線 量 推 定 の 集 団 単 位 として 用 いられていることも、 共 通 点 の 一 つである。ある 集 落 にお<br />

いて、 人 体 および 環 境 中 の 131 Iの 直 接 計 測 の 結 果 が 数 多 く 利 用 可 能 な 場 合 、それが 線 量 算 定 に 用 い<br />

られる。 過 去 の 131 Iの 測 定 結 果 が 利 用 可 能 でない 集 落 の 場 合 、 地 域 の 放 射 能 汚 染 の 指 標 である 137 Cs<br />

の 土 壌 沈 着 量 が、 線 量 算 定 を 補 助 する 数 値 として 用 いられる。<br />

これら 共 通 点 の 一 方 、 環 境 や 人 体 の 131 Iの 直 接 計 測 データがない 集 落 の 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 算 定 方<br />

法 は、3ヶ 国 で 大 きく 異 なっている。 乾 燥 した 気 象 条 件 でほとんどの 放 射 性 ヨウ 素 が 沈 着 【 乾 性<br />

沈 着 】したウクライナでは、Likhtarevら[5.45]によって、 甲 状 被 曝 線 量 が 137 Csの 土 壌 沈 着 量 に 線 形<br />

に 依 存 するモデルが 作 成 された。 放 射 性 ヨウ 素 の 乾 性 沈 着 および 湿 性 沈 着 【 降 雨 による 沈 着 】の<br />

両 方 が 起 こったベラルーシでは、 甲 状 被 曝 線 量 は 137 Csの 土 壌 沈 着 量 と 非 線 形 的 に 依 存 するという<br />

半 経 験 的 モデルが、Gavrilinら[5.35]によって 作 成 され、 広 く 用 いられた。 最 近 出 版 された 別 の 論<br />

文 では、 同 じこの 問 題 を 扱 うにあたって、 放 射 性 ヨウ 素 の 環 境 中 の 移 動 に 関 する 放 射 線 生 態 学 的<br />

な 包 括 モデルを 作 成 しており、 甲 状 腺 被 曝 線 量 の 算 定 にこれを 適 用 することにも 成 功 している<br />

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