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チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復 ... - 日本学術会議

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いうのは、 成 人 についてはその 後 の50 年 の 間 、それ 以 下 の 若 い 人 については70 歳 までの 間 に、 個<br />

人 が 被 曝 することになる 推 定 総 線 量 である。 90 Srと 239 Puを 除 けば、ほとんどの 放 射 性 核 種 は 体 内 で<br />

の 生 物 学 的 滞 留 時 間 が 短 いため、 預 託 線 量 の 大 部 分 は、 最 初 の1 年 間 の 被 曝 線 量 である。 他 方 90 Sr<br />

や 239 Puのようにゆっくりと 代 謝 される 核 種 では、 長 い 年 数 の 間 でも 実 際 には 預 託 線 量 の 全 量 を 被<br />

曝 する 訳 ではない。<br />

内 部 被 曝 線 量 の 別 の 評 価 法 として、 人 体 内 に 存 在 する 評 価 対 象 の 放 射 線 核 種 を 直 接 測 定 する 方<br />

法 がある。この 方 法 は、 被 害 が 最 も 大 きかった3ヶ 国 [5.33-5.35]における 人 間 の 甲 状 腺 内 の 131 I、<br />

および 全 身 の 137 Cs(たとえば 文 献 [5.10,5.36])による 内 部 被 曝 の 評 価 の 際 に 採 用 された。 特 に 甲<br />

状 腺 の 場 合 、 直 接 測 定 だけでは 被 曝 線 量 を 計 算 するには 十 分 ではないので、 体 内 や 各 臓 器 におけ<br />

る 放 射 性 核 種 の 過 去 および 将 来 の 濃 度 を 確 定 するためには、 直 接 測 定 の 情 報 を、 体 内 取 り 込 みに<br />

関 する 適 切 なモデルによって 補 足 する 必 要 がある。<br />

将 来 の 放 射 線 被 曝 線 量 予 測 には、 長 寿 命 核 種 の 体 内 取 り 込 み 量 を 予 測 する 必 要 がある。 主 要 放<br />

射 性 核 種 である 137 Csの、 環 境 から 人 体 への 長 期 にわたる 移 動 については、【 過 去 の】 広 範 囲 ある<br />

いは 局 所 的 放 射 性 フォールアウトの 際 の 経 験 を 利 用 できる。また、チェルノブイリ 事 故 から 十 分<br />

な 時 間 が 経 過 したため、チェルノブイリ 事 故 自 体 の 測 定 結 果 も、 食 品 や 体 内 における 137 Cs 濃 度 の<br />

推 移 を 予 測 するために 利 用 できる。 例 えば、Likhtarevら [5.10]は、1987 年 から1997 年 の 間 に 集 め<br />

られた126,000のミルクのサンプルから 137 Csの 放 射 能 の 半 減 期 を 計 算 し、その90%が 半 減 期 2.9±0.3<br />

年 で、 残 りの10%は 半 減 期 15 ± 7.6 年 で、それぞれ 指 数 関 数 的 に 減 少 することを 見 いだした。この<br />

【10 年 という】 観 察 期 間 は、 137 Csの30 年 という 半 減 期 と 比 較 して 短 いため、 後 者 の 半 減 期 の 値 は<br />

確 実 性 に 乏 しい。しかしこれらのデータはロシアで 得 られたデータ[5.37,5.38]ともおおむね 一 致 し<br />

ている。<br />

5.3.2. 内 部 被 曝 線 量 評 価 に 用 いるモニタリングデータ<br />

チェルノブイリ 事 故 に 関 する 人 体 の 内 部 被 曝 のモニタリングの 特 徴 として、 人 体 や 臓 器 ( 主 に<br />

甲 状 腺 )の 放 射 性 核 種 の 含 有 量 の 全 身 計 測 が 広 範 囲 に 実 施 されたことが 挙 げられる。 全 身 計 測 は、<br />

食 品 、 飲 料 水 や 環 境 その 他 の 定 期 的 な 測 定 と 併 せて 実 施 された。こうした 多 様 なモニタリングデ<br />

ータを 組 み 合 わせることで、 内 部 被 曝 線 量 を 再 構 築 する 際 の 精 度 を 大 幅 に 高 めることが 可 能 にな<br />

った。<br />

空 気 中 からの 吸 入 による 内 部 被 曝 線 量 の 評 価 には、 前 節 で 述 べたような 大 気 中 濃 度 の 測 定 が 用<br />

いられた。このうち 最 も 重 要 だったのは、 大 気 中 の 放 射 性 核 種 の 濃 度 が 相 対 的 に 高 かった、 事 故<br />

直 後 の 数 日 間 の 線 量 の 評 価 である。それ 以 後 に 吸 入 由 来 の 被 曝 線 量 の 評 価 が 必 要 になったのは、<br />

プルトニウムのように、 食 物 連 鎖 中 には 入 り 込 みにくい 核 種 が、 再 度 空 気 中 に 混 入 し 内 部 被 曝 線<br />

量 に 関 連 した 場 合 に 限 られた。<br />

食 品 や 飲 料 水 とともに 摂 取 された 放 射 性 核 種 の 量 は、ヨーロッパ 全 体 や 特 に 汚 染 度 が 最 も 高 か<br />

った3カ 国 (ベラルーシ、ロシア、およびウクライナ)での 131 I、 134, 137 Cs、および 90 Srの 多 数 の 測 定<br />

結 果 から 算 定 された。 131 Iや 134,137 Csのガンマ 線 スペクトル 計 測 と、 90 Srの 放 射 化 学 的 分 析 が 主 要 な<br />

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