医療機関における精神障害者の 就労支援の実態についての調査研究
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第 2 章 海 外 文 献 レビュー(1) 労 働 機 関 側 への EBP の 理 解 の 促 進 ( 医 療 との 統 合 的 支 援 の 重 要 性 )わが 国 では、EBP としての IPS は 医 療 機 関 側 で 先 に 取 り 組 まれ、 主 に 医 療 機 関 を 中 心 とした 取 組 としての紹 介 であったため、 医 療 機 関 における 疾 患 管 理 や 生 活 支 援 等 の 職 業 準 備 性 モデルによる 就 労 支 援 に 対 して「 職業 準 備 性 モデル vs. 援 助 付 き 雇 用 モデル」という 軸 での 強 調 が 多 い。しかし、IPS について「 迅 速 な 職 探 し」等 の 援 助 付 き 雇 用 の 軸 が 強 調 されるだけでは、 就 職 できたとしても 体 調 を 崩 したり 人 間 関 係 を 悪 化 させて 退職 させることは、 本 人 へのダメージ、 企 業 への 負 担 、さらに、 支 援 者 の 信 頼 性 の 低 下 につながる。 米 国 などでは、 退 職 を 前 向 きな 選 択 としてとらえ、すぐに 次 の 仕 事 を 探 して 就 職 する 傾 向 があるが、わが 国 では 就 業継 続 がより 重 視 される。 労 働 機 関 側 では、 従 来 型 の 援 助 付 き 雇 用 モデルでの 限 界 の 中 で、 疾 患 管 理 や 生 活 支援 等 の 重 要 性 が 意 識 されるため 共 通 認 識 が 困 難 になりやすかったと 考 えられる。その 意 味 でも、わが 国 においては、 職 場 定 着 の 効 果 も 高 める、 医 療 との 統 合 の 軸 を 含 めて 総 合 的 に 紹 介 することが 必 要 である。 特 に、 既 に 援 助 付 き 雇 用 モデルでの 就 労 支 援 が 一 般 的 である 労 働 機 関 向 けには、IPSは「 医 療 的 支 援 との 統 合 の 強 vs. 弱 」という 軸 を 強 調 し、 医 療 的 支 援 と 統 合 された 援 助 付 き 雇 用 としてその 内容 を 明 確 にすることが 重 要 である。(2) 労 働 と 医 療 の 連 携 のより 一 層 密 接 な 連 携 の 必 要 性重 度 精 神 障 害 者 への 就 労 支 援 においては、 就 労 支 援 と 医 療 ・ 生 活 支 援 の 統 合 が 成 功 の 重 要 なポイントであることが 一 貫 して 示 されているが、その「 統 合 」の 要 件 は 具 体 的 には、 就 労 支 援 者 と 医 療 ・ 生 活 支 援 者 が 同一 のチームして 密 接 なコミュニケーションによって 支 援 することが 求 められている。これは、 重 度 精 神 障 害者 においては、 医 療 ・ 生 活 ・ 就 労 支 援 の 課 題 が 複 合 的 であり 統 合 的 な 支 援 が 不 可 欠 なことを 反 映 している。わが 国 においても、 労 働 機 関 と 医 療 機 関 の 統 合 的 な 支 援 を 可 能 とする 体 制 や、 医 療 ・ 生 活 支 援 との 具 体 的 な役 割 分 担 のあり 方 についても、 今 後 検 討 が 必 要 である。必 要 とされる 統 合 的 な 支 援 体 制 のためには、 米 国 においては、 医 療 チームが 雇 用 専 門 家 を 雇 う 形 が 歴 史 的に 多 く、わが 国 における IPS も 医 療 機 関 に 就 労 支 援 者 を 置 く 形 での 取 組 が 多 い。しかし、 米 国 でもカスタマイズ 就 業 ( 障 害 者 職 業 総 合 センター 調 査 研 究 報 告 書 №80 参 照 )の 取 組 では、ワンストップセンター(わが国 のハローワークに 相 当 )を 中 核 として 医 療 機 関 との 密 接 なケースワークにより、 効 果 的 な 精 神 障 害 者 への就 労 支 援 を 実 現 している 例 もある。わが 国 においても、チーム 支 援 等 のケースワーク 方 式 で 個 別 的 継 続 的 に多 職 種 が 連 携 する 等 、 様 々な 連 携 の 形 態 が 検 討 される 必 要 があろう。また、EBP として、 就 労 支 援 との 統 合 の 効 果 が 確 認 されている 医 療 ・ 生 活 支 援 は、 疾 患 管 理 については、服 薬 ・ストレス 対 処 を 含 む 本 人 の 自 己 管 理 や 目 標 設 定 を 重 視 した 個 別 的 ・ 継 続 的 な 支 援 となっている。また、生 活 支 援 は、 当 事 者 が 地 域 で 生 活 することを 前 提 とした 他 職 種 チームによる 包 括 的 支 援 であり、 給 付 に 関 する 相 談 も 福 祉 支 援 だけで 実 施 されるのではなく 就 労 支 援 と 一 体 的 に 実 施 することで 高 い 就 業 成 果 に 結 びついている。 家 族 支 援 では 家 族 も 重 要 な 治 療 パートナーとして 取 り 組 むための 教 育 やグループセッションを 重 視している。これらは「 医 療 との 連 携 」における 医 療 側 の 取 組 の 重 要 性 を 示 している。-37- - -