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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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っているからである。<br />

Daniels (1954, 1964: 59-60) は、「[日本語のアクセントの区別の]根本要素は、口中、口辺、<br />

主として舌の或る筋肉の緊張化 (intensification) にある」と述べ、ピッチでは区別できないは<br />

ずの「ささやき」(whisper) の状態でのアクセントの区別を挙げ、これを「『声帯には無関係<br />

の、舌の或る筋肉の緊張化』の有無による区別である」と述べている。<br />

興味深い観察であるが、それによって日本語のアクセントを「舌の筋肉の緊張化」と見な<br />

すことはできないし、まして「声帯には無関係」とは言えないだろう。筆者は、ささやきの<br />

状態でのアクセントは別扱いにして、ささやきの場合には、通常ピッチで区別される音節の<br />

アクセントの有無が強さによって代償される、と考える。これは、ささやきの状態で「雨」<br />

/ame/ と「飴」/ame/を区別する際に極度に力を入れて発音させなければならない事実<br />

によって説明される。<br />

(3) 比較<br />

スペイン語のアクセントの音声的性質が基本的な「強さ」と余剰的な「長さ」であるのに<br />

対し、日本語のアクセントの性質は「高さ」である。このことは対照音声学的に見て重要な<br />

点であって、後述するイントネーションの問題とも関連する。<br />

スペイン語のアクセント 日本語のアクセント<br />

強さ ○ ×<br />

長さ △ ×<br />

高さ × ○<br />

比較を可能にするために、次のような同一の基準に基づく単純化した図式を使う。<br />

S. /pe 'pi ta/ J. /ha˥ na ko/<br />

上の図の横線は音の相対的な高さを示す。便宜的に最低のレベルを 0 とし、最高点を 4 と<br />

して、その間を等分に 3, 2, 1 を設定する。線分の長さを音節の調音時間の相対的長さに比例<br />

させ、線分の太さでその強さを示す。連続した発話の音節は細い線で結び休止は空白にする。<br />

これは、O'Connor-Arnold (1961, 1964) の英語の分析や Stirling(1935) のスペイン語の分析に<br />

用いられている表記法を参考にした。彼らのものは次のようにストレスとピッチしか表せな<br />

いので、ここではさらに長さと音の連続も示せるように線分を使うことにする。<br />

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