スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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(d) J. /h/の有声化異音<br />
日本語のぞんざいな発話では/h/の有声化異音が現れる 83 。<br />
[ɦ] 声門有声化摩擦音<br />
[ç v ] 硬口蓋有声化摩擦音<br />
[ɸ v ] 両唇有声化摩擦音<br />
一方、S/x/, S/f/の摩擦性は強く、母音間で有声化されることはない。このため、スペイン語<br />
話者には「ご飯」/gohaN/ [goɦaN]が*/goan/と聞こえ、「会費制」/kaJhiseH/ [kaiç v iseː]が/kayse/<br />
と聞こえることがある。<br />
(2) S. /θ/ : /s/と J. /s/ : /z/<br />
スペイン語/θ/ : /s/と 日本語/s/ : /z/は、次の図に示されるような関係にある。<br />
(a) S. /θ/ : /s/と J. /s/<br />
上の図で示したように、日本語話者は S. [θ]も S. [s̺ ]も J/s/に同定するため、以下のような最<br />
小対の弁別が困難である 84 。<br />
caza (猟) /'kaθa/ ['kaθa]<br />
casa (家) /'kasa/ ['kas̺ a]<br />
cocer (煮る) /koθer/ [ko'θeɾ]<br />
coser (縫う) /ko'ser/ [ko's̺ eɾ]<br />
また、S. [s̺ ]は舌先 (apex) と歯茎の間がせばめられ、舌面が凹型になって、少し retroflex<br />
のような音色をもつ。一方、日本語の[s]では、舌端 (blade) と歯茎の間で摩擦部が形成され、<br />
後部軟口蓋 軟口蓋 後部軟口蓋<br />
/k/ [k + ] [k] [k-]<br />
/g/ [g + , ɣ + ] [g, ɣ] [g-, ɣ-]<br />
/x/ [x + ] [x] [x-]<br />
83 丸山 (1929b: 51), 服部 (1951: 48). [ç v ](硬口蓋有声化摩擦音)と[ɸ v ](両唇有声化摩擦音)の有<br />
声化については述べられていないが、筆者はこれらも観察できると思う。<br />
84 英語を知る日本語話者は E. /θ/で S. /θ/に代用するが、これは円熟性 (mellow) の音である<br />
ため、 粗擦性の S. /θ/とは異なった音色になる。<br />
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