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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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はじめに<br />

構造言語学の方法に基づいてスペイン語と日本語との音声の記述とその対照的分析および<br />

学習上の問題点について考察する。<br />

スペイン語の音声の研究には、Navarro Tomás (1918), Stirling (1935), Gili Gaya (1966), Quilis y<br />

Fernández (1969), Dalbor (1969) などの著書があり、日本語の音声については、Edwards (1903),<br />

佐久間(1929), Bloch (1950), 服部(1951), 金田一(1967) の著書やその他の多くの雑誌論文 (巻<br />

末の参考文献) が発表されてきたが、対照音声学の立場からの研究は原(1963) を除いては例<br />

がなかった。<br />

しかし近年、言語学の諸理論の発展とともに対照研究の一般的な方法が開拓され、それを<br />

各々のケースに応用した具体的な研究成果も多く発表されている 1 。これらの資料のうち現在<br />

まで入手できたものを参考にし、また筆者が日本人の立場から研究してきたスペイン語の音<br />

声の資料や授業での経験をもとにして、可能な限り網羅的にまとめたものが本論文である。<br />

1. 方法<br />

具体的な対照分析をはじめる前に、その方法論を検討し比較作業の枠組みを提示したい。<br />

また、ここで用いられる資料の性格とその扱い方についても言及する。<br />

1. 1. 比較の方法<br />

これまで対照分析は、その性格や目的に応じて様々な方法でなされてきたが、それらは次<br />

のように分類できる。<br />

(1) 音声学的方法<br />

(2) 形式的音素論<br />

(3) 統計的方法<br />

(4) 弁別素性分析<br />

(5) 生成音韻論<br />

(6) 音声事実に基づく音素論<br />

(1) 音声学的方法とは、たとえば閉鎖音の気息音を伴う開放という現象について各言語を比<br />

較したり、各言語の母音の長さを比較したりする方法である。この方法では音素的差異の有<br />

無にかかわらず、すべてを同一のレベルで扱うため、言語を構造的に見る視点を見失いやす<br />

い、という難点がある。音声学的方法は音声事実を重視するという点で評価されるが、その<br />

音声事象が音素的にどのような価値があるかを常に考慮に入れなければ、単なる音声の比較<br />

にとどまることになるだろう 2 。<br />

(2) 形式的音素論による方法では、逆に音声事実を抽象化させて比較作業を進めるもので、<br />

1 Hammer and Rice (1965), ELEC (1967), Di Pietro (1971, 1974), 高田 (1974).<br />

2 この意味で Lisker and Abramson (1964)や Delattre (1965)は優れた音声学的研究である。<br />

7

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