スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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一方、emic な単位であるはずのアクセント素の数が非常に多く、その種類の無限性にも問<br />
題がある。たとえば、金田一 (1957) によれば、「坊ちゃん坊ちゃ˥んする」といった語の例が<br />
あげられている。金田一が提唱する/高/や /低/の「調素」 (toneme) の考え方を導入すれば、<br />
単位の数としては 2 つであり経済的である。しかし、/高/と/低/に切り離してしまうと、その<br />
配列の規則性は見失われてしまう。<br />
例:<br />
「心」/低高低/<br />
「鶯」/低高低低/<br />
「桜」/低高高/<br />
このように両者の説には一長一短がある。そこで、第三の立場として「アクセント核」そ<br />
のもの(/˥/)を emic な単位として認めたい 135 。これは単位の数としては 1 つであり、その配置<br />
が弁別的機能を果たす。また、金田一の弱点である記述の冗長さ(redundancy) も解決される。<br />
以下の記述で日本語の音素的アクセントに言及するときはすべてこのアクセント核を示す。<br />
例:<br />
「心」/koko˥ro/<br />
「鶯」/ugu˥isu/<br />
「桜」/sakura/<br />
モーラ音素/H, J, N, Q/にはアクセントのかからない性質がある。たとえば、「電話」/deNwa/<br />
+「機」/ki/という結合には、漢語の結合法則 136 によって、/deNwa˥ki/のように、前の語の最<br />
後の拍にアクセントが置かれる。ところが、「飛行」/hikoH/+「機」/ki/は、*/hikoH˥ki/となる<br />
べきだが、前部の語の最後の拍が長音素(/H/)であるために、1 つ前の拍に移動して、/hiko˥Hki/<br />
となる。同様にして、「進水式」、「日本海」、「11 歳」も次のように法則通りにはならない。<br />
「飛行機」 */hikoH˥ki/ cf.「電話機」/denwa˥ki/→/hiko˥Hki/<br />
「進水式」 */siNsuJ˥siki/ cf.「除幕式」/zyumaku˥siki/→/siNsu˥Jsiki/<br />
「日本海」 */nihoN˥kaJ/ cf.「東シナ海」/higasisina˥kaJ/→/niho˥NkaJ/<br />
「11 歳」 */zyuHiQ˥saJ/ cf.「16歳」/zyuHroku˥saJ/→/zyuHi˥QsaJ/<br />
このように、/CV˥M/と/CVM˥/の対立がないために、アクセントの置かれる単位はモーラで<br />
はなく、音節であると考えるほうが妥当である 137 。そこで、長音節(モーラ音素で終わる音節)<br />
と短音節 (/CV/) に配置されるアクセントの型を表すと、以下のようになる。<br />
135 古くは宮田 (1928, 1929) の唱えた説がある。<br />
136 秋永 (1958: 43.<br />
137 McCawley (1968), 早田 (1974, 1975).<br />
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