スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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acuerdo「合意」/'akwerdo/ ['aku̯ eɾdo]<br />
pagar「払う」/pa'gar/ [pa'ɣaɾ]<br />
seguir「続く」/se'gir/ [se'ɣiɾ]<br />
agua「水」/'agwa/ [aɣ w u̯ a]<br />
[g + ]と[ɣ + ]は、/i/, /y/の前に現れる後部硬口蓋音である。[g- w ]と[ɣ- w ]は、/u/, /w/の前に現れる<br />
後部軟口蓋円唇化音である。<br />
この他に、/b/と/d/には/u/, /w/の前に現れる円唇化異音[b w ], [β w ];[d w ], [d w ]がある。/o/の前の<br />
子音の円唇性は比較的弱い。<br />
スペイン語の/b/, /d/, g/には閉鎖音と摩擦音の異音がある。頻度から見れば摩擦音の方が優<br />
勢であるが、音素的には (構造的には) 有声閉鎖音に分類される。これは、S/p, t, k/と平行し<br />
た閉鎖音系列であるためで、かりに S/f, θ, s, x/と平行させても、音素的にも音声的にも無理<br />
が生じるためである。音素的には、/b, d, g/が 3 種であるのに対し、摩擦音系列/f, θ, s, x/は 4<br />
種であること、音声的には、/b/の異音[β]と/f/ [f], /d/の異音[d]と/θ/ [θ]、/g/の異音[ɣ]と/x/ [x]は<br />
それぞれ円熟性/粗擦性で弁別されるが、調音点についても少しずつずれが生じる。たとえ<br />
ば、[β]は両唇音であるが、[f]は唇歯音である。(ただし、[ɣ]と[x]の調音点は同じである。) ま<br />
た、/p, t, k/が音節末で弱化されると、それぞれ[β, d, ɣ]に近くなるので、この点からも/b, d, g/<br />
は/p, t, k/と系列を共にする。<br />
(2) 日本語の/b, d, g/<br />
日本語には次の有声閉鎖音素がある。<br />
/b/ [b] 両唇有声閉鎖音<br />
[β] 両唇有声摩擦音<br />
[b j ] 両唇有声硬口蓋化閉鎖音<br />
[β j ] 両唇有声硬口蓋化摩擦音<br />
/d/ [d] 歯茎有声閉鎖音<br />
/g/ [g] 軟口蓋有声閉鎖音<br />
[g + ] 後部硬口蓋有声閉鎖音<br />
[g-] 後部軟口蓋有声閉鎖音<br />
[ŋ] 軟口蓋有声鼻音<br />
[ŋ + ] 後部硬口蓋有声鼻音<br />
[ŋ-] 後部軟口蓋有声鼻音<br />
[b]は語頭および/N/の後で現れる。例:「便利」/beNri/ [benɾi];「今晩」/koNbaN/ [kombaN]。<br />
[β]は母音間で、ややぞんざいな発話に現れる。「危ない」/abunaJ/ [aβɯnai̯ ].<br />
/b/にはこれら以外に、/i, y/の前に現れる口蓋化異音[b j ], [β j ]がある。例:「病気」/byoHki/<br />
[b j oːk j i];<br />
/d/は一般に[d]で発音される。「台所」/daidokoro/ [dai̯ dokoro].<br />
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