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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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接近音[j]と硬口蓋化の音声的差違は顕著である。前者の渡り部は短い上に 60 、音色も開き気<br />

味になる。とくに「蚊帳」/kaya/、「御用」/goyoH/、「露」/cuyu/などのように、/VyV/の位置で<br />

はさらに開く。<br />

2 の/C/は両唇音である。/CyV/の位置では、両唇の聴音と舌の調音が/yV/の部分が独立して<br />

いるために、両唇の開放後、それに瞬時遅れて舌が[a]の位置をとるので、比較的目立つ渡り<br />

音の[j]が観察される 61 。<br />

3 の位置では調音はすべて舌の運動によって行われ、口蓋化された子音から音節主音母音<br />

へ移行するとき、顕著な渡り音は聞こえない。<br />

日本語のはと以下のように対立する。<br />

「謝意」/syai/ [ʃai] :「試合」/siai/ [ʃiai]<br />

「如意」/nyoi/ [ɲoi] :「臭い」/ɲioi]<br />

なお、硬口蓋または口蓋化音は/y/の前の他に/i/の前でも現れる 62 。例:「道」/mici/ [mitɕi]、<br />

「シジミ」/sizimi/ [ʃiʑimi]。<br />

は一般に/Ci/と音素解釈されるので、*/Cyi/は存在しない。<br />

◆J. /syai/と/siaJ/のスペクトログラフ<br />

/sya/では/y/が/sy/ [ʃ]に入っているが、/sia/では/i/が独立している。<br />

(3) 比較<br />

(a) /y/の異音<br />

J. /syai/ /siaJ/<br />

はじめに、休止または鼻子音/n/の後、および母音間の位置における両言語の/y/の異音と、そ<br />

の構造化を比較する。S/y/ [ɟ], [ʝ]に対応する日本語音は J[dʑ], [ʑ]である (後述) 。また、S[j]<br />

には J[j]が対応する。スペイン語ではすべて/y/に属する異音であるが、日本語では[dʑ], [ʑ]は<br />

音素的に/zy/に、[j]は/y/に属する異音である。J[dʑ], [ʑ]のそれぞれの位置は、S/y/ [ɟ], [ʝ]の位置<br />

60 服部(1951): 51.<br />

61 服部(1951): 51.<br />

62 Trubetzkoy (1939, 1969): 129f や Polivanov (1959, 1979): 118f は「シ」などの<br />

を、「シャ」などのと同じ palatalized の系列に入れて音素解釈するが、日本<br />

語の形態音素論を考慮するならば、たとえば「シ」は「サスセソ」の系列に入れて、「シャ」<br />

「シュ」「ショ」とは別にすべきである。<br />

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