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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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説明できる。日本語の音声史において、[pa]から発達した[ɸa]は、さらに[ha]に変化したが 68 、<br />

現代語において再び外来語の影響によって[ɸa]が再生し、音素的地位を築いている。たとえば、<br />

「ファン」は丁寧な発話では、[ɸan], ぞんざいになると[ɰ̥ aN]となる。後者は、「湾」[ɰaN]<br />

の[ɰ]が無声化した音であるため、次のような比例式が成立する。「案」[aN] : 「半」[haN] =<br />

「湾」[ɰaN] :「ファン」[ɰ̥ aN]。「案」、「半」、「湾」がそれぞれ/aN/, /haN/, /waN/と解釈される<br />

ので、「ファン」を、/hwan/とする分析が合理的である。また、[ɸan]はハ行の「フ」[ɸɯ]が下<br />

の図の↓のように独立した系列である。同様に独立した[ça]が、/hya/と解釈されるので、それ<br />

に平行させれば、[βa]は当然/hwa/となるはずである。<br />

よって筆者は、[ɸa]を/hwa/と解釈し、Jones (1950: 243) のように/h/から独立した */ɸ/を設定<br />

しない 69 。<br />

(6) 比較<br />

S. /w/の諸異音に対応する J の音には、[gɯɰ], [gɯ], [ɯɰ], [ɯ]が挙げられる。その対応関係<br />

は次のようになる。<br />

S. /w/の諸異音に対応する J の音が音素として/guw/, /gu/, /uw/, /u/に対応するので、JP には次<br />

のような過大区別をする傾向がある。たとえば、ahueco/a'weko/ [a'ɣ w u̯ eko] ~ [a'weko]は、>J.<br />

/aguweHko/, /agueHko/, /aweHko/, /aueHko/のように、まちまちな反応をする。また子音に続く<br />

場合は、S. /ad'wana/ [a'd w u̯ ana] > J. /adu'waHna/, /adua'na/のように母音が分立する。<br />

音声的には、S. [g w ], [ɣ w ]は J. [gɯɰ]に比べて調音時間が短く、また日本語にはない円唇性と<br />

後舌性が目立つ。S. [w]は、J. [ɯ], [ɰ]に比べ調音位置が高く後寄りで円唇的である。また、J[ɯ]<br />

より調音時間が短い。<br />

68 橋本(1950): 29f.<br />

69 この解釈の難点は、J/CwV/の/C/が/h/だけに限られることになる。これは/h/の音声的性質が<br />

非常に母音的であることが原因であると思われる。<br />

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