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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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4. アクセント・イントネーション・リズム<br />

本章では、アクセントとイントネーション(構造言語学の用語では「超分節的」suprasegmental<br />

要素)について、両言語の記述と対照分析を行う。<br />

4. 1. アクセント<br />

発話内のある特定の音節を、その強さ (intensity)、高さ (pitch)、長さ (duration)、きこえ<br />

(sonority) などによって、他の音節より際だたせる手段の総称を「アクセント」(accent) と呼<br />

ぶ 123 。スペイン語では、これらの手段のうち基本的に強さが用いられ、日本語では高さの変<br />

化が用いられる。<br />

4. 1. 1. アクセントの基本的性質<br />

(1) スペイン語<br />

スペイン語では強勢の配置により、以下のような対立が生じる。<br />

/SS'S/ terminó (彼は終えた) /termi'no/<br />

/S'SS/ termino (私は終える) /ter'mino/<br />

/SSS/ término (終わり) /'termino/<br />

/S'SSS/ comételo (それをしろ) /ko'metelo/<br />

/'SSSS/ cómetelo (それを食べてしまえ) /'kometelo/<br />

さて、スペイン語の音声的実体について、先にそれが基本的に音の「強さ」によるもので<br />

あると述べたが、これには次のような留保が必要である。Quilis (1971) は、スペイン語のア<br />

クセントの音声的特徴を明らかにするために、以下の実験を行った。<br />

5 人の被験者に、estímulo (刺激)、estimulo (私は刺激する)、estimuló (彼は刺激した) のよう<br />

なアクセントの対立がある語を 7 組用意して発音させ、これを音響学的に分析し、その結果<br />

を、(a) 基本周波数 (Hz)、(b) 母音の長さ (c. s.)、(c) 強さ (amplitude)、(d) 強さの領域 (mm 2 )<br />

に分けて表示した。各語を、(1) 孤立させて、(2) Digo la palabra ____. (私は____という語を言<br />

う) という環境、(3) Digo la palabra _____ otra vez. (私は_____という語を再び言う)という環境<br />

の中で交替させる。その結果、(a~d) の各指数がアクセントのある母音の位置で一致しないこ<br />

とが多く、たとえば、(1) 孤立させた estímulo, estimulo, estimuló における各指数は以下のよう<br />

になった 124 。<br />

123 石橋編 (1973), s. v. Accent.<br />

124 Informante-1, art. cit. , p. 63.<br />

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