スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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一方、日本語では、/イ˥チ|ニ˥ー|サ˥ン|ヨ˥ン/ のように単調なパタンになる 156 。<br />
日本語話者は、スペイン語の発話内の上昇音調や下降音調の習得が困難であり、一方、ス<br />
ペイン語話者は日本語の単調な句の連続を真似るのが難しい。<br />
4. 2. 4. 音調の配列<br />
ここでは 2 つ以上の音韻的句を持つ音韻的文の中の句の配列について考察する。<br />
(1) スペイン語<br />
句の配列は以下のように分類できる。<br />
(a) 重文型<br />
(b) 複文型: (b1) 付加型; (b2) 挿入型; (b3) 先行型<br />
(a) 重文型は 2 つ以上の句の音調が共に整った形式を持っているものである。先行する句は必<br />
然的に一時休止で終わるために、末尾のみが 2 つの句の相違点となる。たとえば、次の/'dulθe↓/<br />
の下降は、/ma'ria↓#/の下降よりも緩やかである 157 。<br />
Juan compró un dulce y lo comió María.<br />
/'xwan kon'pɾo 'un 'dulθe↓ i lo ko'myo ma'ria↓#/<br />
(フアンは飴を買って、それをマリアが食べた)<br />
(b) 複文型は 2 つの句の音調の間に勢力の差があって、主句と従句に分けられるものをさす。<br />
S. /'mulo↑ 'muɾo↓/<br />
最小対の実験では、音声環境が異なるので注意が必要である。それぞれに番号をつけて、<br />
/'uno, mulo↓ 'dos 'muro↓/のような発音をしてもらうとよい。<br />
156 日本語話者に単語のリストを読んでもらうと、スペイン語のような「列挙のイントネーシ<br />
ョン」(cf. 前注) は現れないが、次のような強調形が現れることがある。<br />
/イノ"チ| ウグイ"ス| ミズウ"ミ| トモダ"チ/<br />
ここでも、最終モーラは疑問調のように上昇することはなく、強められるだけである。こ<br />
の音調は子供の「尻取り遊び」にも現れる。<br />
157 cf. 4. 2. 3<br />
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