スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
You also want an ePaper? Increase the reach of your titles
YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.
A 言語話者が B 言語を学習するときに「過小区別」(under-differentiation) を起こし、逆に B<br />
言語話者が A 言語を学習するときに「過大区別」(over- differentiation) を起こす 17 。<br />
英語を学ぶ北京語話者は、[p]も[b]も Ch:/b/と解釈しているので、たとえば bill を[bil]とも、<br />
[pil]とも発音して過小区別をする。逆に中国語を学ぶ英語話者は、[p]を/p/と解釈し、[b]を/b/<br />
と解釈して過大区別する 18 。<br />
2 次元の音声場の例として、S. /xV/, /xwV/, /fV/, /fwV/と J. /hV/, /hwV/の対応がある。スペイ<br />
ン語では/x/, /f/に母音/V/または半母音/w/+母音/V/が続く音素連続は音声的に以下のような 2<br />
次元の場を形成する。<br />
一方、日本語では/ha/と/hwa/の対立のみがあり、一元的な音声場を形成する。両言語を同じ<br />
場に置くと、<br />
となる。上の図から、日本語話者 S. /xa/を J. /ha/に対応させる一方で、S. /fa/, /fwa/, /xwa/をす<br />
べて過小区別して J. /hwa/に対応させる。<br />
3 次元の音声場の例として S. /r, ri, l, li/と J. /r, ry/の対応があげられる。スペイン語異音は以<br />
下のような場を構成する。<br />
17 Weinreich (1953; 1976), pp. 37-38.<br />
A 言語 B 言語<br />
/a/<br />
/xa/ [xa] [xua]/xwa/<br />
/fa/ [fa] [fua]/fwa/<br />
J. /ha/ [ha] J. /hwa/ [βa]<br />
S:/xa/ [xa] S:[xua]/xwa/<br />
S:/fa/ [fa] S:[fua]/fwa/<br />
18 実際の事情はさらに複雑で、/#___V/の環境において、Ch:/p/は気息がないために、英語話<br />
者には[b] /b/に聞こえることがある。このように、ある環境において、当該言語にない音声が、<br />
別の音素に帰着しようとする動きを「牽引」(attraction)と呼ぶことにする。<br />
12<br />
[a] /a/<br />
[b] /b/