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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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スペイン語の音節には必ず 5 音素の中の 1 音素が存在し、それに先行する子音音素、C-3, C-2,<br />

C-1 と、後続する子音音素 C+1, C+2, C+3 がある。C-3 は 2 組に別れ、1 つは次に流音/ɾ/, /l/を<br />

従えるもの(/p, t, k, b, d, g, f/)であり、他は流音が続かないもの(/c, θ, s, x, m, n, ñ, r, ɾ/)である。<br />

C+2 は、/s/を後続させるものと(/p, b, t, d, k, g/)、させないもの(n, l, ɾ, θ)に分類される。<br />

スペイン語では二重母音が発達しているので母音と母音の結合がなめらかである。スペイ<br />

ン語の核には次のものがある。<br />

単純核/V/: piso (階), peso (重さ), pan (パン)<br />

複合核-1/SV/: viento (風), abuelo (祖母) 107<br />

複合核-2/VS/: causa (原因), voy (私は行く)<br />

複合核-3/SVS/: limpiáis (君たちは掃除をする)<br />

一般に等しい母音が結合すると両者は融合し、異なる母音が結合すると二重母音を形成す<br />

る傾向がある。このことからも、母音と母音の結合がなめらかであるという性質がわかる。<br />

(1) 等しい母音の結合<br />

(a) 弱勢母音+弱勢母音の場合:単一の弱勢母音になる。<br />

Nunca atiende. (けっして相手をしない) ['nuŋka a'ti̯ ende] >['nuŋka 'ti̯ ende]<br />

(b) 弱勢母音+弱勢母音の場合:単一の強勢母音になる。長さは通常の強勢母音と同じである。<br />

Ya sé el tema. (私はもうテーマを知っている) ['ɟa 'se el 'tema] >['ɟa 'sel 'tema]<br />

(c) 弱勢母音+強勢母音の場合:幾分長めの強勢母音になる。<br />

¿A dónde entras? (どこに入るの) [a 'donde 'entɾas] >[a 'don'dentɾas]<br />

(d) 弱勢母音+強勢母音の場合:長い強勢母音になる。<br />

Ya han venido. (もう彼らは来た) ['ɟa 'am be'nido] >['ɟaːmbe'nido]<br />

上の(c), (d) の場合でも強勢の短かい母音になることもある。長母音が現れるのは丁寧な発<br />

話である 108 。<br />

(2) 異なる母音の結合<br />

(a) 両者の調音点が等しいか、後続母音のほうが低い場合。<br />

(i) 先行母音が弱勢の場合:上昇二重母音となる。<br />

107 S. /yi/は、rayito (< rayo (光線) + ito (縮小辞)) 語幹に接尾辞がつくときに限られる。<br />

108 Quilis (1964) では長母音と短母音の起こる確率 (%) を示しているが、ここではそれを単<br />

純化して示した。<br />

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