スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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◆スペイン語母音のスペクトログラフ<br />
S. [i] [e] [a] [o] [u]<br />
[i], [e], [a], [o], [u]の順で、第 1 フォルマント(F1)は低→中高→高→中高→低となり、第 2 フ<br />
ォルマント(F2)は高→低となる。[u]では F1 と F2 がほとんど一致している。<br />
(2) 鼻母音化<br />
Navarro Tomás (1918; 1974: 36)によれば、2 つの鼻子音の間にある母音、および、語頭にお<br />
いて、鼻子音に後続される母音は鼻母音化する。Navarro Tomás は、鼻母音化の程度に差があ<br />
ることを記述していないが 44 、筆者の観察によれば次のような違いがある 45 。<br />
位置 例 意味 音声表記<br />
(1) N___N-C nunca (決して…ない) ['nu~ŋka]<br />
(2) #___N-C enfermo (病人) [e~ɱ'feɾmo]<br />
(3) N___-NV mano (手) ['ma~no]<br />
(4) #___-NV ama (彼は愛する) ['a~ma]<br />
上の(1)では最も鼻音化されやすく、完全な鼻母音になる。(2)では発話のスタイルにもよる<br />
が、/e/の調音の過程で徐々に鼻音化されていく傾向がある。しかし、ふつうフランス語のよ<br />
うな鼻母音にはならない。(3) は早い発話で鼻音化するが、丁寧な発音では比較的口音性が保<br />
たれる。(4) は鼻母音化の程度が少ない。このように、母音に後続する鼻子音が母音とともに<br />
音節を形成するか否かで鼻音化の程度が異なる。<br />
(3) 弱勢母音の弛緩化<br />
Navarro Tomás (1918; 1974: 45)によれば、/...___-#/, /'S-___-S#/, /___-'S-S#/の位置にある母音<br />
は弛緩する 46 。<br />
44 実際に鼻母音化は、発話のスタイルによって影響され、ぞんざいな発話では起りやすく、<br />
その程度も大きい。ここでは普通体で各音声を比較する。<br />
45 N は鼻子音、C は子音、V は母音、ハイフン(-)は音節の境界、#は休止を示す。<br />
46 S は弱勢音節、'S は強勢音節を示す。<br />
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