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スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学

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にならないが、後者は J. /c/ : /s/の対立があるために過小区別となる 77 。<br />

「罪」/cumi/ [tsɯmi]<br />

「隅」/sumi/ [sɯmi]<br />

S/c/ [tʃ]は調音点が前部硬口蓋であるが、J. [tɕ]の調音点は歯茎硬口蓋であって、いくぶん前<br />

寄りである。聴覚的に S. [tʃ]はこもった音色をもつが、J. [tɕ]は「浅い」感じがする。また、<br />

S[tʃ]には多少の円唇化があるが、J. [tɕ]は平唇である。<br />

なお、その他の子結合については後述する。<br />

◆スペイン語の[tʃ]と日本語の[tɕ]<br />

スペイン語の[tʃ]と日本語の[tɕ]はとてもよく似た音で聞き分けるのが難しい。竹林 (1996:<br />

50) によれば、[tʃ]は硬口蓋歯茎破擦音 (palato-alveolar affricate) であり、[tɕ]は歯茎硬口蓋破擦<br />

音 (alveolo-palatal affricate) である。破擦音の項 (id.: 50) には詳しい調音点の違いが説明され<br />

ていないが、それぞれに対応する摩擦音の項 (id.: 41-42) によれば、フランス語やドイツ語の<br />

[ʃ]は後舌面がもり上がり、円唇性が強く、暗く重い響きを持っている。一方日本語の歯茎硬<br />

口蓋摩擦音[ɕ](alveolopalatal fricative) は前舌面がもり上がり、唇が円くなることはなく、比較<br />

的明るい音色を帯びる。スペイン語に[ʃ]がないが、それに対応する破擦音[tʃ]と J. [tɕ]に違い<br />

は、舌のもり上がりの位置の差が違うようである。筆者が日本語の「チ」を発音してみると、<br />

やはり舌の盛り上がりは前舌部になっているようである。S. [tʃ]の調音における後舌面のもり<br />

上がりについては Quilis (1993: 290) の X 線映像図が参考になる。円唇化については、たとえ<br />

ば chico (男の子) ['tʃiko]のように/i/の前でも起こるかどうかも多数の観察が必要である。<br />

77 一般にスペイン語では閉鎖音+摩擦音という子音連続を回避する傾向があるが、その中で<br />

比較的安定しているのが、/kθ/と/ks/である。fricción (摩擦) /frik'θyon/, examen (試験) /ek'samen/。<br />

しかし、これらも/k-θ/, /k-s/のように間に音節の切れ目ができる。たとえば、etcétera /et'θetera/<br />

はこの型への類推からしばしば/ek'θetera/となる。<br />

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