スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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のピッチが下がる傾向があるからである (cf. 4. 2. 4)。<br />
/'soplo/<br />
* ó o<br />
(a) Hz 202 162<br />
(b) c. s. 9. 2 9. 6<br />
(c) db 28 28<br />
(d) mm 2 286 150<br />
99<br />
/so'plo/<br />
* o ó<br />
(a) Hz 202 202<br />
(b) c. s. 4. 8 8<br />
(c) db 27 29<br />
(d) mm 2 121 174<br />
筆者は、スペイン語のアクセントの音声的実体を、音の強さ (amp) とその持続時間 (t) の<br />
関数であると考える。図で示すと、以下の線分に囲まれる面積である。<br />
当然のことではあるが、この Acento の値は音調その他の条件によって乱される場合がある<br />
ので絶対的な定義にはならない 126 。また、末尾部を除いては一般に強勢音節は高くなる傾向<br />
があり、さらに対比や強調を示す場合は、ピッチに上昇がより顕著になるため (cf. 4. 2. 1)、<br />
それも無視できない。しかし、先に述べた理由から大部分のピッチ (高さ) の要素はイントネ<br />
ーションの問題として扱うべきである。<br />
(2) 日本語<br />
日本語のアクセントの音声的性質は、基本的にピッチであって、強さや長さの要素はあま<br />
り重要ではない。「強さ」については、語頭と核が幾分強められることはあるが、基本的にこ<br />
れがピッチのパタンを崩すことは少ない。また、「長さ」についてはすでに/H/音素として分<br />
節音素の機能を果たしているので、このことが再び超分節的に用いられるのを妨げている。<br />
また、それが逆に作用して、日本語のアクセントの機能を「強さ」になりにくくしていてい<br />
る、と思われる。すなわち、強さアクセントには通常その余剰的特徴として 127 、「長さ」を持<br />
126 Quilis (1971) の調査では 105 例中、17 例ある。<br />
127 「余剰的」(redundant) というのは誤解を与えやすい表現である。先述のようにスペイン語<br />
のアクセントの長さの要素は決して余分なものではなく、それを除くならば、アクセントは<br />
多くの場合認識できなくなる。よって筆者はこれを「補強的特徴」と呼びたいくらいである<br />
が、本論文では慣例に従うことにする。