スペイン語と日本語の音声の対照的研究 - 東京大学
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ようである 120 。<br />
3. 3. 3. 比較<br />
スペイン語では重子音を嫌い、単子音化する傾向があるのに対し、日本語では/Q/や/N/のモ<br />
ーラ音素の働きで重子音が多く現れる。しかも、これらの重子音の前半部は一般の音節 J.<br />
/CV/と同じ長さで発音されようとするとするため、とくにその重子音性が強調される。この<br />
点は日本語話者の話すスペイン語に大きな干渉となって現れ、なめらかであるはずのスペイ<br />
ン語の発話に/Q/や/N/のモーラ音素を挿入させてごつごつした印象を持たせてしまう。<br />
例:<br />
Entre ellos había una comunidad de intereses. (彼らは利害を共通にしていた)<br />
S. [en'tɾeʎos a'βia 'una komuni'dadei̯ nte'ɾeses]<br />
>J. [entɾe 'eʎos a'βia 'una komuni'dadd de inte'ɾesses]<br />
このように、日本語話者は、スペイン語の語末子音と後続語の語頭の同一子音を融合する<br />
ことが困難である。また、語末の子音と、次に続く母音は同一の音節にすることも困難であ<br />
り、それぞれ区切って発音する傾向がある。<br />
一方、スペイン語話者は、J/Q/や/N/の等時性を習得するのが困難である 121<br />
S. /C1-C2/の結合は日本語話者にはむずかしく、>J. /C1u-C2/のように母音を挿入させる。<br />
S. abnegación /abnega'θyon/ > J. /abunegasioN/<br />
S. técnico /'tekniko/ > J. /tekuniko/<br />
ただし、C1 が/t, d/の場合は母音/o/が挿入される。<br />
S. adjetivo /adxe'tibo/ > J. /adohetiHbo/<br />
また、C1 が/n/の場合は、J. /N/に同定される。<br />
S. cansado /kan'sado/ > J. /kaNsaHdo/<br />
よって、日本語話者には次のようなスペイン語の(準)最小対を弁別することが難しい。<br />
saldar (決算する) /sal'dar/: saludar (挨拶する) /salu'dar/<br />
astillar (粉々にする) /asti'ʎar/: asutilar (微妙にする) /asti'lar/<br />
また、日本語話者には音節境界にある S. /l-r/や S. /r-l/の発音が難しい。<br />
120 その他、J. / V-V/の結合と/C-V/の結合については、それぞれ、3. 1. 2 と 2. 8. 2 を参照され<br />
たい。<br />
121 cf. 2. 8. 3 (2), 2. 8. 3. (3).<br />
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